自民裏金疑獄「森元首相包囲網」着々と狭まる… 西村前経産相・下村元文科相“再聴取”が意味するもの
通常国会が26日に召集される運びとなり、自民党派閥の政治資金パーティー収入裏金化事件をめぐる東京地検特捜部の捜査はいよいよ大詰めだ。とりわけ安倍派(清和政策研究会)の汚いカネの流れをどこまで解明できるのか。
政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で事務方の会計責任者の立件が確実視される中、西村康稔前経産相や下村博文元文科相ら幹部が再び任意で事情聴取を受けたという。オーナー気取りだった森元首相に対する包囲網がどうやら狭まっているようだ。
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西村氏と下村氏は、ともに派閥の実務を取り仕切る事務総長経験者。販売ノルマを超えたパーティー券収入をそれぞれの議員にキックバックする裏金スキームを把握していたとみられている。還流と一部議員による「中抜き」を合わせた安倍派の裏金は、時効が未成立の2018年からの5年間で約6億円。特に西村氏については、会長だった安倍元首相の意向でキックバック廃止を決定し、安倍元首相の死去後に撤回した際の事務総長だった。一昨年のことだ。
「還流廃止と復活のタイミングで事務総長だった西村氏は、報告や了承などといった事務方とのやりとりがどうしたって避けられず、共謀の構図をとらえやすい。立件は不可避でしょう。証拠固めのための再聴取にしても、下村氏にまでまた聞くのは腑に落ちない。本人を挙げるというよりは、別の狙いが透けて見える。裏金スキームが動き出した当時の清和会会長だった森氏の関与の度合いを調べ上げるためではないか」(司法関係者)
18年1月以降の事務総長は、下村氏→松野博一前官房長官→西村氏→高木毅前国対委員長の順。キーマンとは言えない下村氏が再び呼ばれたのは、森元首相との因縁ゆえか。
小悪も巨悪も眠らせるな
総理総裁への野心をたぎらせる下村氏は安倍元首相死去後に会長就任をもくろんだが、シャシャリ出てきた森元首相があの手この手で阻止。森元首相に土下座したエピソードを暴露し、西村氏ら「5人衆」をさんざっぱら持ち上げ、下村氏を中枢から徹底的にパージした。
「森さんは引退後も億単位のカネを集め、とかく資金力を誇ってきた。カネに対するこだわりは強く、会長昇格を狙った塩谷立座長に『カネはあるのか?』と詰め寄ったほど。安倍さんの鬼籍入り以降、中ぶらりんの清和会を事実上取り仕切ってきたのは森さんです。ポスト岸田の座を狙う西村氏がこれ見よがしの忠誠心で森さんに逐一報告していたのは想像に難くない。森さんから蛇蝎のごとく嫌われ、痛めつけられた下村さんは事情をよく知る一人なのも間違いないでしょう」(自民党関係者)
そもそも、安倍元首相が還流廃止を言い出した意図も判然としない。特捜部が聴取した安倍派議員に対し、「キックバックの一部を森元首相に上納していなかったか」と聞いているとの情報もある。東京五輪汚職をめぐり、特捜部の遺恨はくすぶる。小悪も巨悪も眠らせないでほしい。国民の切なる願いだ。
日刊ゲンダイDIGITALより転用
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