アンコール遺跡保存に30年 上智大の石沢教授「人材育成にめど」 カンボジア
- 国際
- 2024年1月3日
上智大の石沢良昭教授(86)=北海道帯広市出身=は約30年間、カンボジア北西部シエムレアプにある世界遺産アンコール遺跡群の保存に尽力してきた。
2023年11月、現地で時事通信のインタビューに応じ、「遺跡を修復するカンボジア人の人材育成にめどが立ち、安心している」と語った。
石沢氏は同月、日本政府や上智大が支援したアンコールワットの西参道修復工事の完成式典に出席した。シハモニ国王はあいさつで石沢氏に言及し、「重要な支援に感謝したい」と述べた。
石沢氏は1960年代、上智大でフランス語を専攻していた縁でかつて仏保護領だったカンボジアを訪れ、遺跡に魅了された。「約800年前にこれほど大きな石造寺院が建造されたことに感動した。当時の技術や建立理由を解明して未来に残すことを決意した」という。
ただ、カンボジアでは70年に激しい内戦が勃発。60年代は約40人いた遺跡の保護に当たる「保存官」は、ポル・ポト政権下で知識人と見なされ殺害されるなどし、石沢氏が80年に訪問した際は3人しか生存を確認できなかった。
石沢氏を中心に上智大は91年、「カンボジア人によるカンボジアのための遺跡修復」を掲げ、保存官の育成活動を始めた。「内戦で傷ついた民族の誇りを取り戻す手伝いをしたいと考えた」といい、96年には現地に教育施設を設立した。
同年からアンコールワットの西参道の修復工事が始まり、現地の保存官らは日本の専門家と共同で作業を行い経験を積んだ。石沢氏は「30年以上かかったが育成にめどが立った。ただ、今後も協力は続ける」と話した。
時事通信より転用
コメントする