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米国のEV普及に“ブレーキ” 「青い州」でEVシフト法案撤回…大統領選の争点にも?


米国のEV(電気自動車)の普及にブレーキがかかった。

コネティカット州のネッド・ラモント知事(民主党)は27日、同州議会に提案していた「EVシフト州法案(内燃機関使用の自動車規制州法案)」を撤回した。

地元紙「コネティカット・ミラー」電子版によると、同法案は翌28日に州議会規制検討委員会で審議に入るかどうか採択される予定だったが、大差で否決される見通しになったため、知事が廃案よりも撤回の道を選んだのだという。

「EVシフト州法案」撤回の背景は

この法案は、2035年以降ガソリン車の販売を禁止する、つまり販売されるのはEVでなければならなくなるというもので、バイデン政権の打ち出した大気汚染対策に基づいてカリフォルニア州が2022年に採択した類似州法に倣って2023年7月州議会に提案されていた。

コネティカット州は民主党支持者の多い、いわゆる「青い州」で、前回2020年の大統領選挙ではバイデン大統領に60%の票を与えたのを始め、州上院は24議席対12議席で民主党多数、下院も98議席対53議席で民主党多数で、民主党のラモント知事としては立法がしやすい環境にあったはずだ。

しかし、この法案に限っては超党派の抵抗があったらしい。

規制検討委員会は定員14人で、民主、共和それぞれ7人の議員が代表しているが、与党民主党の中にも反対者が少なくなかった。その一人、キャシー・オステン議員は、この規制によって高額のEVが及ぼす影響や電力消費の増大を懸念したと「コネティカット・ミラー」紙に語っている。

やはり民主党のジョアン・ハートレイ議員も「私は11万6000人の有権者を代表しているが、その平均所得は4万2000ドル(約620万円)だ。(EVにはとても手がでない)」と、委員会採択が行われれば共和党議員に賛同して反対票を投じるつもりだったと言っている。

抵抗感の背景に「充電ステーション不足」

環境問題に意識の高い民主党の勢力が支配的な「青い州」でこうであれば、他は推して知るべしで、ここへきて米国ではEVの人気がはかばかしくない。

米国の自動車販売店では新車が納入されて売れるまで、ガソリン車の場合は平均54日だが、EVの場合は92.2日かかっている。(Cox Automotive調べ)販売店は在庫の負担がかさむEVを敬遠することになるが、それは消費者のEVに対する抵抗感を反映するものに他ならない。

米国の市場調査会社Ipsosが10月に行ったEVに関する世論調査で、「次はEVを買うか?」という質問に対して「間違いなく買う」7%「おそらく買う」7%「多分買う」17%で、EVに肯定的な回答は31%に過ぎなかった。

これに対して、「多分買わない」21%「間違いなく買わない」36%で否定的な回答は57%にも及んだ。(この他「分からない、回答せず」12%)

EVに対する懸念材料を聞くと、「充電ステーション不足」77%「走行距離不足」73%「ガソリン車に比べて高価」70%などとなっている。

なかでも「充電ステーション不足」は深刻な問題のようだ。米エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は今夏、EVの啓発のために4日間かけて米国南部4州を米国産EVを連ねてデモ・ドライブを行ったが、途中ジョージア州で先行したシークレットサービスが一行のために充電ステーションを封鎖して確保したところ、怒った地元のEVユーザーに訴えられるという騒ぎを起こしてしまった。

EVシフトは大統領選の争点にも?

これまでカリフォルニア州式のEVシフト州法は、コロラド州やニューヨーク州など全米17の州が適用もしくは審議してきたが、コネティカット州が脱落したことで、今後EVシフトを検討する州ではその是非をめぐって論議が高まりそうだ。

また、2024年の米大統領選挙に共和党の候補者指名が有力とされるドナルド・トランプ前大統領はEVシフトには否定的で、「米国の自動車産業は中国に遅れをとり雇用喪失を招くことになる。私が再選されればEVシフトを止める」と言っているので、この問題は選挙の争点としても論議されることになるだろう。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】

【表紙デザイン:さいとうひさし】

FNNプライムオンラインより転用


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