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日テレのスタジオジブリ子会社化 「Hulu」配信に期待の声、逆襲の一手になるか


日本テレビ放送網(日テレ)が『となりのトトロ』などの製作元として知られるスタジオジブリ(東京都小金井市)を子会社化したと発表した。ネット上では早くも、日テレ系の動画配信サービス「Hulu」(フールー)での作品配信に期待の声が高まっている。今回の買収は、競合サービスの後塵を拝していた同サービスの逆襲の一手になる可能性がある。

●買収から約10年 3番手止まりのHulu

 日テレは2014年2月にHuluの日本事業を買収。独占配信のオリジナル作品や、自社が地上波で放送した番組を配信していたが、国内では「Amazon プライムビデオ」、「Netflix」(ネットフリックス)などに次ぐ存在だった。

そうした状況は各種データにも表れている。ICT総研が4月に発表した「2023年有料動画配信サービス利用動向に関する調査」では、利用している有料動画配信サービス1位はAmazon プライムビデオで利用率69.9%を占めた。2位はネットフリックスで同30.1%。Huluは3位だったものの、利用率は14.0%にとどまっていた。

 MMD総研の調査でも、「利用経験がある動画配信サービス」1位はAmazon プライムビデオ(40.1%)、2位ネットフリックス(20.4%)、3位Hulu(14.3%)。トップ3の序列は変わらなかった。

 利用者を獲得する際の判断材料の1つとなる作品数でも、他サービスが上回っている。GEM Partnersの調査では見放題作品数1位は「U-NEXT」。2位がAmazon プライムビデオで、Huluはまたしても3位だった。

 U-NEXTは2月に、テレビ東京やTBS、WOWOWなどが参画する動画配信サービス「Paravi」(パラビ)の運営元を買収すると発表しており、7月からパラビとU-NEXTのサービス統合を開始している。在京キー局では、日テレ単体で手掛けるHuluに対し、U-NEXTはテレ東とTBSの2社のコンテンツを配信する。コンテンツ数の差は明らかで、今後、さらにその差が開くことが予想される。

●海外ではサブスク解禁済み

 このように競合サービスの中でHuluはあらゆる項目で中途半端な立ち位置にあったのが実情だ。そんなHuluの逆襲の一手として期待されるのが、スタジオジブリ作品の配信だ。SNS上では「ジブリ作品がHuluで見放題になったら熱い」など期待する声が多数出ている。

 これまで、日本国内では作品のサブスク配信を解禁していないスタジオジブリ。子会社となったことでHulu独占配信を実現できれば、利用者獲得の大きな武器となる。日テレ側がスタジオジブリを説得できるかが実現の鍵を握るだろう。

 スタジオジブリ作品のサブスクサービスでの配信は、国外ではすでに始まっている。ネットフリックスは20年2月に『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『アリエッティ』『魔女の宅急便』『となりのトトロ』など21作品を配信すると発表し、大きな話題になった。

これについてスタジオジブリの鈴木敏夫社長は「宮崎駿でいうと、(Netflixなどの動画配信サービスが)何なのかよく分かってない。彼はパソコンも使わないし、スマートフォンも使わない。だからデジタルで配信と言ってもピンとこない」とした上で「(宮崎監督に)『映画の制作費をこれで稼ぐ』と説明した」と明らかにしていた(ハフポスト20年3月7日付記事)。

 ただ、配信地域は「米国・カナダ・日本を除く」となっており、スタジオジブリ初のフル3DCGI作品で、宮崎吾朗監督が手掛けた『アーヤと魔女』の配信が始まった際も同様に、配信地域は「日本と米国以外」となっていた。フランスの映画配給会社ワイルドパンチとネットフリックスの契約で実現した配信だったが、対象地域に北米や日本が含まれていなかったためとみられる。

 日テレは、1985年に『風の谷のナウシカ』をテレビ初放映して以来、映画番組「金曜ロードショー」を通じてスタジオジブリ作品を放送し続けてきた。『魔女の宅急便』からは映画製作に出資を始め、01年開館の「三鷹の森ジブリ美術館」設立を支援するなど、長年、蜜月関係を維持している。

 宮崎監督自身が、デジタル機器に否定的な印象を持っているとされる報道もある中、長年の関係を背景に、創業者を説得できるかも配信実現には必要となりそうだ。

 報道によれば、会見で福田次期社長はHuluでの配信について「今のところ現状と何も変わっておらず、何かあればこれから考えたい」と答えたという。

 国外ではすでにネットフリックスでの作品配信が始まっているため、仮にHuluで配信が始まっても、新規の利用者獲得への影響は限定的かもしれない。だが、根強いファンが多いジブリ作品を配信できれば、日本国内においては競合サービスとの差別化につながる。

 日テレは子会社化について「スタジオジブリを子会社にしてこれまで以上に支援していくことは、日本テレビグループ全体の企業価値の向上に大いに資する」とする一方「スタジオジブリの自主性を尊重する」とも明言している。日テレはスタジオジブリ作品の配信を実現させることはできるだろうか。

ITmedia ビジネスオンラインより転用


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