上関町長、中間貯蔵施設の調査受け入れ表明 中国電にも方針伝達
- 政治・経済
- 2023年8月19日
中国電力が山口県上関(かみのせき)町に建設を計画する使用済み核燃料の中間貯蔵施設をめぐり、同町の西哲夫町長は18日、中国電による施設建設に向けた調査を受け入れると表明し、中国電に伝えた。調査の申し入れから16日後に判断した。同社は、関西電力と共同開発する方針で近く調査の準備に入る。青森県むつ市に続き、全国で2例目の中間貯蔵施設の計画が動き出すことになった。
18日にあった町議会の臨時会で、西町長は町の人口減や厳しい財政状況に触れ、「持続可能なふるさとを次世代につなげることが私の使命だ」として調査を受け入れる考えを表明。その後、全10議員が意見を述べた。うち7人が「調査段階から交付金が入る」などと賛成する一方、3人が「拙速で住民への説明が足りない」などと反対した。
最後に西町長が正式に受け入れを表明して閉会。町長はすぐに中国電に方針を文書で伝えた。
文書では、環境への配慮や住民説明会の開催、周辺市町への説明などを求めた。これを受け、中国電は同日、声明で「環境保全に十分に留意しながら安全第一で調査・検討を進める」とした。約1カ月かけて調査に向けた準備をし、来春ごろには調査を終えることをめざす。
上関町では約40年前に原発計画が浮上。2009年に準備工事が始まったが、11年の東京電力福島第一原発事故の直後に工事は止まった。関連の交付金や経済効果が見こめなくなった町は今年2月、財源の確保につながる振興策を中国電に要望。中国電は今月2日、上関原発建設のために保有する同町長島の敷地内で、中間貯蔵施設を建設する計画案を提示した。
町の試算などでは、調査の受け入れによって、最大で年1・4億円の交付金が国から入るとされる。山口県知事が建設に同意すれば、その後の2年間は最大で年9・8億円の交付金が入る。
西町長は記者団に「中間貯蔵施設はリスクも非常に低い。町の財政は厳しく、やれるものからやっていく」と説明した。
国の核燃料サイクル政策は行き詰まり、使用済み核燃料の搬出先である六ケ所再処理工場(青森県)は稼働していない。この日、反対派の市民が役場前に集まり、「上関が最終処分場になる」などと声を上げた。
西村康稔・経済産業相は18日、談話で「調査が開始されることは、国のエネルギー政策にとって重要なものだ。政府として、地元に寄り添いしっかりと支援していく」と述べた。一方、山口県の村岡嗣政知事は記者団に「現時点で賛成も反対もない。安心安全がきちんと確保されるのか、しっかりと見ていきたい」と語った。(小川裕介)
朝日新聞社より転用
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