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元霧島の陸奥親方に報酬減額処分「監督すべき立場にあるのに監督を怠った」協会の調査内容詳細


日本相撲協会は23日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、陸奥親方(64=元大関霧島)に報酬減額(20%×3カ月)の処分を科すことを決めたと発表した。陸奥部屋を巡っては、夏場所前に三段目の安西(やすにし、21)が、部屋での兄弟子からの暴力被害を訴えており、その件での調査を経て、この日の決定となった。

陸奥親方は協会ナンバー2の事業部長を辞任。広報部長の芝田山親方(元横綱大乃国)が兼任する。

相撲協会の賞罰規定の第3章「懲戒」に定められた、親方、力士ら協会員の処分は軽い順にけん責、報酬減額、出場停止、業務停止(協会事業への従事を停止)、降格、引退勧告、解雇の7項目がある。

以下、相撲協会の発表

協会員の暴力行為に対する処分について

令和5年6月23日

公益財団法人日本相撲協会

陸奥部屋の幕下以下力士が、同部屋の弟弟子に対して暴力行為を行ったことに関する処分

についてお知らせします。

(1)事案発覚時の経緯

令和5年1月上旬ころ、幕下以下力士Aが、師匠の陸奥に対し、兄弟子の幕下以下力士Bから暴力を受けていることを申告した。陸奥は、翌日、花籠コンプライアンス部長に報告したが、その際、被害者Aが大きなケガをせず医者にかかる事態までに至っていなかったことから、暴力が長期間に及んでいたことなど具体的な内容を説明せず、単に「部屋で暴力行為があった」という程度の抽象的な報告にとどめた。このため花籠部長は、程度の軽い事案と受け止め、部屋内の問題として対処すべきと考え、陸奥に対し「兄弟げんかみたいなものだろうから、まずは部屋で対処するように」と指示した。その指示を受け、陸奥が、加害者Bを呼び事情を聞いたところ、Aに対する複数回の暴力行為を認めたため、Bの引退は免れないと判断し、引退や断髪式の手配を行い、同年4月18日、弟子らに通知した。この間、花籠部長、陸奥は理事長への報告をしなかった。

同月21日、Aは、Bが処分を受けずに引退することに不満を持ち、青沼コンプライアンス委員長に、Bより暴力を受けている旨を電話で通報した。青沼委員長から連絡を受けた花籠部長が、同日、Aを呼んで意向を聞いた。その場でAは、コンプライアンス委員会への通報を維持するか少し考えたいと述べた。花籠部長は同日、八角理事長に事案を報告した。3日後の24日、Aは、Bが引退すれば今後被害にあうことはなく、また引退する兄弟子に処分を科すのは忍びないと思い、花籠部長に通報は撤回すると伝えたうえ、青沼委員長に電話連絡し、コンプライアンス委員会への通報を取り下げた。Bは同月27日引退した。

(2)危機管理委員長の調査結果と処分意見

八角理事長は、花籠部長が本事案の当事者となったことから、コンプライアンス委員会ではなく、危機管理委員会に調査を委嘱することにし、高野危機管理委員長に、事実関係の調査と処分意見の答申を委嘱した。高野委員長は調査班を設置し、八角理事長に、以下のとおり、調査結果の報告と処分意見の答申を行った。

(加害者Bについて)

Bは、弟弟子のAが普段から洗濯などの部屋の仕事を行えず、口頭で指導しても改善が見られなかったことから、Aの頬を握りこぶしで殴るなど暴力を繰り返していた。

令和4年暮れ、陸奥部屋の大掃除の際、AがBの指示とは異なる片付けをしたことに腹を立て、Aの背中や脚を縄跳び用のロープで数回たたいたほか、脇腹を握りこぶしで数回殴打する暴行を加えた。また、令和5年の年明け、部屋のちゃんこ場において、Aの頬を手拳で多数回殴打したうえ、左大腿部に2、3回ひざ蹴りを加えた。相撲協会では、平成29年に起きた日馬富士事件に対する反省から、暴力決別宣言を行うと

ともに、「暴力再発防止策の方針」を公表し、協会員に対する研修等のあらゆる機会を利用して、繰り返し暴力は許されないことを周知徹底する一方、暴力事案に対しては厳重処分をもって臨むなど、協会を挙げて暴力根絶に向けた取組みを継続してきた。

令和4年12月下旬には、伊勢ヶ濱部屋で起きた暴力事案について加害者と親方に厳重処分を行い、陸奥親方はBを含む部屋の弟子全員を集め、改めて暴力禁止を指導し、「暴力をしたら終わりだよ」と諭していた。

Bは、暴力は許されないと陸奥親方から繰り返し指導されてきたことを十分に認識していたにもかかわらず、無抵抗の弟弟子Aに対し暴行を加えていた。

Bは、反省の態度を示し、自ら引退届を提出したため、懲戒処分の対象とはならないが、引退勧告相当の処分案を示すことが妥当と判断した。

(師匠の陸奥親方について)

陸奥親方は、師匠としてBを監督すべき立場にあるから、暴力禁止規程の「監督すべき立場にあるのに監督を怠った」との懲罰事由に該当する。

陸奥親方は日ごろから、弟子らに暴力根絶に向けた研修を積極的に受講させ、自らも弟子らに対し、「暴力はいけない」「暴力をされたり、見かけたりしたら言ってこい」と繰り返し発言してきたほか、稽古場においても、必要以上のいわゆる駄目押しをする弟子に口頭注意をするなどしてきた。

Aから暴力被害の申告を受けた際も、直ちに自らBに対し事実確認をしたうえ、Bを引退させることを想定し、花籠部長に暴力事案の発生を報告しており、この時の報告が詳細にわたるものでなかった点に問題はあるものの、隠蔽を疑わせる事情までは認められない。

しかしながら、陸奥親方は、Aが以前から、兄弟子の指示を失念したり適切に実行できなかったりしていたことを認識していたのであるから、これに起因して兄弟子からの暴行・暴言等が惹起されるおそれがあったことに注意を払うべきで、暴行事案の発生を未然に防止すべき責務があったにもかかわらず、BによるAへの暴行・暴言等について、Aから申告を受けるまで全く気付いておらず、その監督懈怠は明らかであると言わざるを得ない。

加えて、陸奥親方は、平成20年5月、関取の弟弟子に対する暴行事件により、監督責任を問われて懲戒処分を受けているのであるから、より一層、弟子らの指導監督に努めるべきで

あったと言うべきであり、過去の処分歴等を教訓とすることができていなかったとのそしりを免れない。

以上の諸事情を総合的に勘案し、報酬減額(20パーセント×3か月)の懲戒処分が相当と判断した。

(3)理事会決議と今後の対応

本日の理事会では、危機管理委員長の処分意見を踏まえ、幕下以下力士Bについては、引退を認めるものの、引退勧告相当であったことを確認した。

師匠の陸奥については、報酬減額(20%×3か月)とすることを決議し,陸奥に処分を通知した。

なお、Bは引責による引退をしたこと、未だ若年で将来がある点を考慮し、匿名とした。

今後は、全協会員に対し、暴力根絶を改めて伝えるとともに、師匠・年寄には、弟子の指導・監督の徹底、万一暴力が発生した場合の報告の徹底を通知する。

以上

陸奥親方(20年1月撮影)© 日刊スポーツ新聞社

日刊スポーツ新聞社より転用


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