台湾の出版社編集長、中国当局が拘束か 上海訪問後に消息絶つ
- 国際
- 2023年4月25日
台湾の出版社「八旗(はっき)文化」の富察(本名・李延賀)編集長が今年3月に親族を訪ねるために中国・上海を訪問した後、消息が分からなくなっている。八旗文化は新疆ウイグル自治区の人権問題などを扱い中国では出版が許されない学術書などを発行していて、台湾メディアによると、富氏は中国当局に拘束された可能性がある。
台湾の総統府=台北市中正区で2020年2月2日、福岡静哉撮影© 毎日新聞 提供
富氏は中国北部遼寧省出身の少数民族・満州族で、上海の出版社勤務を経て、妻の故郷である台湾に移住した。2009年に設立した八旗文化では中国の歴史や政治に関する書籍を多く出版する。今年2月には熊倉潤・法政大教授が著した「新疆ウイグル自治区」の中国語(繁体字)版を出すなど、日本人研究者による著書の翻訳本もある。
台湾で対中政策を主管する大陸委員会の詹志宏(せんしこう)報道官は今月20日の記者会見で、富氏の安否は確認されているとした上で「家族の希望で詳細な説明は控える」とした。八旗文化は24日、「皆さんと熱く議論を交わし、朗らかに響く彼の笑い声が再び聞けると信じている」と無事を祈る声明を発表した。
熊倉氏は取材に対し、自著の出版に際して何度もやり取りをしたという富氏について「中国周辺地域について深い知識がある。経営的には厳しい学術書の出版にも熱心な、使命感を持った編集者だ」と語った。
中国に関する出版を巡っては、15年に中国共産党や指導者を批判的に描いた書籍を取り扱った香港の「銅鑼湾(コーズウェイベイ)書店」の関係者が相次いで中国で拘束された。こうした事件の影響もあって、香港では中国を批判する論調の書籍の出版は事実上不可能になっている。
毎日新聞より転用
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