カンボジア特殊詐欺犯19人逮捕 〝最凶〟工藤会が直接指揮の恐ろしさ
カンボジア南部シアヌークビルのリゾートホテルを拠点とした特殊詐欺事件で、警視庁は11日、現地から送還された日本人の男19人を詐欺容疑で逮捕した。移送中のチャーター機内で逮捕状を執行し、同日夜に羽田空港に到着した。海外から日本にうその電話をかける事件が相次いでおり、警視庁は実態解明を急ぐ。強制送還といえば、フィリピンから特殊詐欺を行っていたとされる「ルフィグループ」と似ているが、今回は暴力団関係者が直接関わっている点で決定的に異なるという。
特殊詐欺犯を乗せるためのチャーター機(ロイター)© 東スポWEB
詐欺グループは1月24日にカンボジアのホテルから特殊詐欺を行い、有料サイトの未払い料金があると偽って東京都内の60代女性から電子マネー25万円相当をだまし取った疑いがあり、警視庁が今月上旬に逮捕状を取っていた。19人はほとんどがウソ電話をかける「掛け子」だったが、中心的な役割を担っていたとみられる特定危険指定暴力団工藤会系の関係者(38)が含まれている。
数千万円の費用がかかるチャーター機を使ったのも、捜査関係者と容疑者の人数が多かったこともあるが、何より工藤会関係者がいるからとみられる。
元暴力団関係者は「北九州の小倉に本部を置く工藤会は市民相手に銃や手りゅう弾を使う事件を起こし、みかじめ料を払わない市民を恐喝する組織として知られています。かつて米財務省が『世界最大の犯罪組織であるヤクザの中でも最も凶暴な団体』として経済制裁の対象にしたほどです。工藤会は全国の暴力団の中でも特に荒っぽく、国家権力に反抗的でもあります」と指摘する。
関連するビデオ: カンボジア拠点“特殊詐欺グループ”19人を逮捕 日本に移送のチャーター機内で 警視庁 (日テレNEWS)
カンボジア拠点“特殊詐欺グループ”19人を逮捕 日本に移送のチャーター機内で 警視庁ミュート解除
フィリピンからルフィグループを送還した際は民間機に民間人と同乗させた。今回は万が一、工藤会が捜査員を襲撃した際に民間人を巻き込まないよう、チャーター機を使ったというわけだ。
2000年以降、市民に対し複数の事件を起こし、03年には高級クラブに手りゅう弾を投げ込む事件を起こした。福岡県警は「越えてはならない一線を越えた」と声明を出し、徹底摘発を行った。14年に工藤会のトップで総裁の野村悟被告が逮捕。21年8月、福岡地裁は4つの市民襲撃事件で、野村被告に死刑判決を言い渡した(控訴中)。判決言い渡しの後、野村被告は裁判長に対し、「あんた、生涯後悔するぞ」と怒声を浴びせた。“使用者責任”で“親分”が死刑とされた。この判決を受け、他の暴力団は「公共の場での銃器の使用禁止」を組員に通達した。
この野村被告の逮捕前から“シノギ”がなくなってきた工藤会は関東、そして海外に進出していたという。
「警視庁は工藤会対策室を設置し、活動実態解明を進めていました。暴力団同士の抗争ならまだしも、市民への暴力は絶対に許されない。工藤会はそこにちゅうちょがないんです」(同)
また、暴対法では組員が特殊詐欺など「威力を利用した資金獲得行為」をした際は、使用者責任でトップが賠償責任を負うと定め、組長に対する賠償請求訴訟が多く行われた。やはり多くの暴力団は「特殊詐欺に関与することを禁止」を組員に通達した。
先の関係者は「国内の特殊詐欺グループでも、ルフィグループでも“黒幕”の存在がささやかれ、暴力団は直接関わらずに半グレを手足にして間接的に関与しています。その表向きの理由は、任侠が高齢者からカネをだまし取るのは恥ずべきこととされていますが、実際は使用者責任を問われた組長が賠償請求されると金銭のダメージが大きいからです。ところが工藤会は特殊詐欺グループを直接指揮し、組員が指示役として逮捕されています」と語る。
今回逮捕されたカンボジアのグループでも工藤会の2次団体の関係者が指示役とされており、ルフィグループの“黒幕”とは別とみられているが、全容解明が待たれるところだ。
東スポWEBより転用

コメントする