UBSがクレディ・スイスを4300億円で買収・合併 欧州最大規模の金融機関に
- 国際
- 2023年3月20日
スイス金融最大手UBSは19日、経営危機に陥っていた同国金融大手クレディ・スイスを30億スイスフラン(約4300億円)で買収し、合併すると発表した。世界的な名門同士の大型再編で、合併によって欧州で最大規模の金融機関となる。金融不安の拡大を早期に収拾するため、スイス国立銀行(中央銀行)と金融監督当局が買収交渉を後押しし、市場での取引が始まる20日までの合意にこぎつけた。
スイス国立銀行は買収に関し、両社に最大で1000億スイスフランの資金枠を設定する。これとは別に、クレディ・スイスには1000億スイスフランの資金枠を追加で設ける。またスイス政府は、両社が株主による投票を経なくても合併できる特別措置を適用する。買収は存続会社をUBSとし、クレディ22・48株あたりUBS1株を割り当てる。買収作業は2023年末までの完了を目指す。
クレディ・スイスの時価総額は1兆円規模に上り、今回の買収額はその半分以下の水準となる。スイスのベルセ大統領は19日に記者会見し「(市場の信頼を回復するための)迅速で安定的な解決策が必要で、それがUBSによるクレディ・スイスの買収だった」と説明。ケラーズッター財務相は「クレディ・スイスが破綻すれば、スイスの金融市場に巨大な損害が生じるところだった」と述べ、金融危機を回避するための合併であることを強調した。
クレディ・スイスは、21年に米投資会社「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」との取引で巨額の損失を出すなど業績が悪化。22年6月には、ブルガリアの麻薬組織によるマネーロンダリング(資金洗浄)を阻止できなかったとしてスイス連邦刑事裁判所から有罪判決を受けるなど不祥事も相次いだ。22年10月には経営再建のため、従業員を3年間で9000人削減する計画を発表するなど混乱が続いていた。
今回の買収劇は、クレディ・スイスが今月14日に公表した年次報告書で、過去の財務報告の内部統制に「重大な弱点」があったと明らかにしたことが発端となった。15日には筆頭株主のサウジナショナル銀行が追加投資を否定したと報じられ、同日の株価は一時、前日比で30%超下落。預金の流出も続き、経営危機に陥った。米シリコンバレー銀行など世界的な大手銀の経営が揺らいだことで金融システムそのものに対する不信も高まり、世界同時株安を招いた。
スイス国立銀行と同国で金融監督を担う連邦金融市場監督機構(FINMA)は15日、「必要があれば流動性を供給する」と支援を表明。クレディ・スイスは16日、スイス国立銀行の資金供給枠から最大500億スイスフランを調達する計画を発表したものの経営不安は収まらず、最終的にUBSの買収を受け入れた。
クレディ・スイスのレーマン会長は19日の会見で「昨年起きた信用の喪失はなんとか乗り越えられたが、今回はできなかった。この解決策が、顧客や従業員、金融市場に対し、安定を保証すると確信している」と述べた。
毎日新聞より転用
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