高速道路の無料化、事実上棚上げ 有料2115年まで
- 政治・経済
- 2023年1月30日
国土交通省は高速道路の料金を利用者が支払う期間を、現行の2065年から50年延長する方針を固め、2月上旬にも通常国会に関連法案の改正案を提出する。老朽化対策や4車線化の費用を確保するためで、無料化が事実上棚上げされた形だ。だが、将来的な高速道路での自動運転導入などで追加投資が必要となれば、さらなる延長は避けられず、現実的な議論が求められる。(福田涼太郎)
「(有識者会議の)中間答申でも道路交通を取り巻く環境の変化などを見据えながら、議論を継続する必要があるとされている」
斉藤鉄夫国土交通相は17日の定例記者会見で、高速道路無料化について「現実的ではないのでは」との質問に、改めて検討を続ける方針を示した。
政府は05(平成17)年の旧道路公団の民営化に伴い、料金徴収を50年までとし、その後は無料開放する方針を定めた。しかし、12年に発生した中央道笹子トンネルの天井板崩落事故で、高速道路の大規模な修繕が必要と判明。国交省は財源確保のため、徴収期間の15年延長を決めた経緯がある。 トンネルや橋をはじめ耐震化を含む修繕・更新が次々と必要になる中、昨年12月に発表された首都高速道路の更新計画では3千億円の追加費用が計上された。
また、国交省は地方部で暫定的に2車線で運用している区間の4車線化を進めており、事故発生箇所などの区間から急ピッチで整備している。こうした事業費の確保にも有料期間延長は欠かせない。
今後は一定期間ごとに更新事業と債務返済の計画を作成し、状況に応じて料金徴収期限を延長する手法がとられ、最終的な期限は2115年に設定された。
ただ、日本高速道路保有・債務返済機構によると、21(令和3)年度末現在の債務残高は28兆2714億円。過去10年で2兆円程度しか減っていない。国交省によると、高速道路の維持管理費は料金に含まれており、無料化されれば財源を考える必要性が生じる。
さらに政府目標で、特定条件下での完全な自動運転を可能とする「レベル4」について、自家用車を対象に高速道路での実現時期を25年めどとしている。実現には高速道路にセンサーや通信設備などを設置する必要があり、大規模な投資が必要になるとみられるが、「自動運転導入に向けた費用は今回の検討に入れていない」(国交省担当者)。 有料期間の延長を提言した国交省の有識者会議で委員を務める筑波大の石田東生(はるお)名誉教授は「当時、『永久有料化』を話す委員もいた」と明かす。
「現在据えている前提であれば償還できるのだろうけど、その前提が変わる可能性もある。(会議では)自動運転のインフラ整備費は誰が負担するのかなど突っ込んだ議論をしていたが、現在は(国交省の方で)議論が後退した印象だ」と語った。
産経新聞より転用
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