ローソンも、すかいらーくも「賃上げ」意欲 経済3団体の新年祝賀会
- 政治・経済
- 2023年1月6日
経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体や業界団体が5日、新年祝賀会を開いた。物価高の中で春闘を控えた今年は賃上げへの関心も高い。企業トップからは前向きな発言が目立ったが、賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)の実施にまでつながるかは判断が分かれそうだ。
祝賀会は昨年の3倍となる600人超が出席した。
冒頭にあいさつした岸田文雄首相は「能力に見合った賃上げこそが企業の競争力に直結する時代。ぜひ、インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と訴えた。呼応するように、経団連の十倉雅和会長も祝賀会後の会見で「ベースアップを中心に、物価高に負けない賃上げをぜひお願いしたい。それは企業の責務だ」と強調した。
価格転嫁で賃上げの原資を確保できるかもポイントで、中小企業をたばねる日本商工会議所の小林健会頭は「価格の適正化、サプライチェーン(供給網)全体でシェアしようという取り組みが大事だ」と述べた。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は企業の規模を問わず「新陳代謝」が重要だと指摘。競争力の強化や成長に向け、事業の入れ替えなどに「勇気を持って挑戦をしていかないといけない」と語った。 企業トップからは前向きな発言が相次いだ。
ローソンの竹増貞信社長は「値上げをお願いしている小売業として、値上げした分は賃金が上がらないと消費につながらない。賃上げをぜひ実行していきたい」と話し、上げ幅は3%を目安に掲げた。コロナ禍で苦しんだ外食産業だが、すかいらーくホールディングス(HD)の谷真・会長兼社長は、収益改善を進めているとし、「2~3%のベアに応じる可能性は十分にある」と話した。
4%の賃上げをする方針を示した大和証券グループ本社の中田誠司社長は「生活コストが上がっているのは間違いない。賃上げをするではなく、すべきである。企業の責任だ」と指摘。6%の賃上げ方針のサントリーHDの新浪剛史社長は「インフレが厳しい。社員の生活を支えることを経営としてやっていかないといけない」と主張し、大和ハウス工業の芳井敬一社長も「世の中に応じた上げ方をしっかりやっていきたい。右肩上がりにならないと国の元気が出ない」と意欲を示した。みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は「人材投資の観点からも大事なことで、極めて前向きにしっかり検討する」とした。三菱UFJ証券HDの荒木三郎会長は今年の賃上げは検討中としながらも、「実質賃金が目減りするようではいけない」と話した。
一方、業績の回復途上にある企業は難しい選択を迫られている。日本航空の赤坂祐二社長は「賃上げして収入も増やして、企業も成長していく好循環に早く乗りたい」と意欲を示すが、時期については「何ともいえない」。ANAHDの芝田浩二社長は「財務基盤との兼ね合い」、JR東日本の深沢祐二社長も「業績自体が戻っておらず、回復させることが大事なテーマ。バランスを考えながら決めていきたい」と話した。
百貨店の松屋の秋田正紀社長もベアは「改めて検討したい」とだけ話し、「即効性があるのは業績連動の賞与だ。業績が回復していくので、社員も期待感をもってほしい」と述べた。
また、具体的な言及はなかったが、三井物産の堀健一社長は「業績をしっかり出して、従業員への還元をその分増やしていきたい」と語った。IHIの満岡次郎会長も「急激な物価高騰がまさしくおきているのは確か。そこへのしっかりした対応はするべきだ」と話したが、具体的な対応方法は言及しなかった。 労働組合の中央組織・連合の芳野友子会長は5日の会見で「物価が非常に上がっているなかで、今年はしっかり実質賃金を上げていき、経済を回していくことが今まで以上に重要な年になる。今年はターニングポイントの年になる」と述べた。物価上昇は「まだまだ続いていくという懸念はある」との認識を示し、賃上げの重要性を強調した。
朝日新聞社より転用
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