英首相の辞任「時間の問題」 死に体化の見方、保守党から悲観論
- 国際
- 2022年10月19日
© 毎日新聞 提供 トラス英首相=ロンドンで2022年10月14日、ロイター
トラス英首相の進退を巡り、与党・保守党内からは早期退陣を予測する見方が出始めている。トラス氏は17日、市場の混乱を招いた自身の大型減税策について「過ち」を認めて謝罪し、引き続き政権を担う意向を表明。この軌道修正については世論調査でも好意的にとらえられたが、求心力を失ったトラス氏はレームダック(死に体)化しているとされ、辞任は「時間の問題」(英紙タイムズ)との悲観論が広がっている。
トラス氏「過ちを謝罪」
「責任を認め、過ちを謝罪したい。(減税により)エネルギー料金高騰に苦しむ人々を助けたかった。しかしあまりに過度な内容で、性急すぎた」。トラス氏は17日の英BBC放送のインタビューでそう語り、減税策をほぼ撤回した。この判断自体は国民に歓迎され、英調査会社ユーガブの17日の世論調査では回答者の54%が「支持する」と答えた。ハント財務相は「彼女にチャンスを与えてほしい」と党議員に呼びかけた。
だが「トラス降ろし」は続く可能性がある。保守党の支持率は低迷しており、ユーガブが11~12日に実施した世論調査では、最大野党・労働党の支持率51%に対し、保守党は23%と大差をつけられた。この状況下で野党が求める解散総選挙に応じても保守党の惨敗は濃厚のため、総選挙には踏み切れないのが現実だ。保守党としては早期の党首交代で「刷新」をアピールしたいのが本音とみられ、党議員100人以上が党首であるトラス氏の首相辞任を望んでいるとの報道もある。
英紙タイムズによると、党重鎮のゴーブ元司法相は18日の集会で出席者から、「焦点は辞任の有無ではなく、いつ辞めるかなのか」と問われ、「その通りだ」と返答。辞任は時間の問題との認識を示した。BBCは「今週中にダムが決壊する」との有力議員の発言を伝えている。
英PA通信によると、英国で最も短命政権だったのは19世紀のカニング首相の在任118日。9月6日に就任したトラス氏の在任日数は来年1月1日でカニング氏に並ぶが、それより前に辞任した場合、記録更新となる。【ロンドン篠田航一】
毎日新聞より転用
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