安倍元首相の地元・下関で進む“安倍離れ” 自民党市議会も最大派閥逆転で王国崩壊
- 政治・経済
- 2022年10月17日
© NEWSポストセブン 提供 下関の事務所も閑散としていた
10月15日に行なわれた山口県民葬で安倍晋三・元首相の一連の追悼セレモニーが終わった。祖父の安倍寛・元代議士、父の安倍晋太郎・元外相、そして安倍氏と戦後政治に大きな足跡を刻んできた安倍家だが、安倍氏に子供はなく、後継者は決まっていない。
政界の名門・安倍家はこれからどうなるのか。
県民葬を目前に控えた10月9日から地元・下関市に取材に入った本誌・週刊ポスト記者が目にしたのは、栄耀栄華を誇った「安倍王国」の“落城”間際の光景だ。
安倍王国の本丸といえるのがJR下関駅と下関港国際ターミナルにほど近い安倍事務所だ。広い事務所内は選挙になると支持者でごった返し、今年7月の銃撃事件直後には献花や弔問客で溢れかえったことで知られる。だが、この日はシャッターが下ろされ、県民葬の準備をしている様子は全くなかった。安倍後援会関係者に話が聞けた。
「秘書さんたちが荷物などを運び出していました。事務所がある第4選挙区支部の安倍さんのポスターの一部も撤去されていますね。県民葬が終われば事務所を閉鎖するみたいですよ。大勢いた事務所スタッフは再就職先探しをしているようです」
事務所スタッフの就職活動は広く知れ渡っているようで、別の後援会関係者もこう語る。
「地元事務所のナンバーツーだった秘書は安倍派の長老議員の事務所にお世話になることが決まったとか。スタッフの中には、安倍さんのライバルだった林芳正・外相の事務所に『働かせてください』と頼んだ者までいるという話が流れているから、寂しいものですね。
安倍系の市議には『昭恵夫人が後継者として補欠選挙に出る』という人もいるが、昭恵さんは国葬批判の世論を見てショックを受け、全くその気はないようです。後継者に立つつもりなら、事務所や秘書を整理したりしないでしょう。県民葬後に、昭恵さんが支援者に挨拶回りをして後援会の解散を決めるんじゃないかと言われています」
市議会も“林派”に
安倍後援会といえば、安倍首相時代に「桜を見る会」への大量招待などで物議を醸した巨大組織だが、首相退陣後はその組織力に翳りが見えていた。衆院山口4区で断トツで当選を続けてきた安倍氏の得票数を見ると、首相時代の2017年総選挙の10万4825票(得票率72.57)から、首相退陣後の昨年10月の総選挙では8万448票(同69.72)と約2万5000票も減らしている。安倍氏という心棒を失って、後援会は組織を保てなくなっていることがうかがえるデータだ。
安倍家の“金城湯池(きんじょうとうち)”と言われた地元政界にも異変が起きていた。
下関は中選挙区時代から安倍家と林外相の林家が市を二分する戦いを展開してきたことで知られる。とくに2017年の市長選では、林系の前市長に安倍氏の元秘書の前田晋太郎・現市長が挑んで勝利し、安倍系が市政を握った。
ところが、である。
「自民党下関市議会も安倍系の『創世下関』が最大会派だったが、銃撃事件後の今年8月に安倍さんと距離を置く『みらい下関』が林派の市議を吸収して最大会派となり、勢力が逆転。“もう安倍さんの威光は通用しない”と安倍直系の前田市長に対抗しています。地元では安倍VS林の構図は完全に崩れて、安倍勢力は消滅、今後は林氏がどう下関を手に入れるかに注目が集まっています」(地元紙記者)
全国最多の8人の首相を輩出した山口県では、早くも自民党県議から「次は林総理を」という声が上がっている。
中央政界では今も安倍派が自民党最大派閥として力を保っているものの、地元の安倍王国は音を立てて崩れていることがわかる。
NEWSポストセブンより転用
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