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森喜朗は、高橋治之・元五輪組織委理事に脅されていた


紳士服大手の「AOKIホールディングス」に続き、出版大手の「KADOKAWA」トップも逮捕され、泥沼の様相を呈してきた東京五輪を巡る汚職事件。東京地検特捜部の捜査では、「電通」OBで元組織委員会理事の高橋治之氏(78)が起点となり、不明朗なカネが飛び交う贈収賄の実態が次々に炙り出されている。

 五輪利権を貪る高橋氏の暴走を、止めることはできなかったのか――。

 ジャーナリストの西﨑伸彦氏が「文藝春秋」の取材で明かすのは、元組織委員会会長の森喜朗元首相(85)と高橋氏との“力関係”である。森喜朗氏 ©共同通信社© 文春オンライン 森喜朗氏 ©共同通信社

 コロナ禍で五輪開催が危ぶまれていた2020年3月10日。高橋氏は米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の取材に「1年か2年の延期が現実的」などと持論を展開し、国内外に波紋が広がった。

 組織委員会の理事である高橋氏が独断で発言したことに、誰よりも不快感を示したのがトーマス・バッハIOC会長だった。IOCの頭越しに、米国を巻き込んで延期の流れを作ろうとしたことが気に入らなかったのだ。

 2週間後、バッハ氏と安倍首相との電話会談で、東京五輪の1年延期が決定するが、2020年3月当時、コロナ禍での開催延期を巡る議論の最中に独断で延期を唱えた高橋氏にバッハ氏が不快感を示し、日本側に理事辞任を求めていた。

 およそ2カ月後、バッハ氏の意を汲んだ森氏は東京・赤坂の料亭「佐藤」で高橋氏と対峙する。引導を渡そうとする森氏に対し、高橋氏は激高しこう開き直った。

「冗談じゃない。やれるもんならやってみなさいよ」

 怒号は部屋の外にまで響き渡り、森氏はなす術なく困惑するしかなかった。弱り果てた森氏周辺から、その話は一部の関係者に瞬く間に広がった。

 10月7日発売の「文藝春秋」11月号では、森元首相の事件への“関与”や、高橋氏を中心に浮かび上がる「慶應人脈」、謎の財団「一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」が五輪招致に果たした役割など、東京地検特捜部の捜査の内幕と招致活動の実態を10ページにわたってレポートする。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2022年11月号)

「文藝春秋」編集部より転用


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