最低賃金「30円以上」引き上げへ 過去最大、物価高騰を考慮
- 政治・経済
- 2022年8月1日
2022年度の最低賃金の引き上げ幅(目安)について、「中央最低賃金審議会」(厚生労働相の諮問機関)の小委員会が全国加重平均で「30円以上」の額とすることで最終調整に入ったことが31日、関係者への取材で分かった。8月1日に最終協議に入り、同日中に決着する見通し。円安などによる物価高騰を考慮した結果で、実現すれば過去最大の上げ幅になる。
最低賃金は全ての労働者に適用される時給の下限で、現在の全国平均は930円。労使の各代表と有識者委員で構成される国の審議会で目安を毎年示し、目安を参考に各都道府県の審議会で確定させる。
国の審議会は7月25日に詰めの協議を行った。ロシアのウクライナ侵攻や円安の影響による物価高騰で労使ともに引き上げる方針については合意していたが、引き上げ幅が焦点となっていた。
労働者側は、物価高を背景に大幅な引き上げを求めていた。一方、経営者側は、仕入れ価格の上昇を納入価格へ転嫁し切れずに収益が圧迫されており、引き上げ幅は小幅にとどめたい考えで、両者の間で隔たりがあった。
25日以降、具体的な協議は行わず、厚労省も含め水面下で調整を続けていた。その結果、物価高に加え、中小企業などでも賃金が上がっている背景を踏まえ、30円以上の引き上げに踏み切る見通しだ。
最低賃金の目安は例年、7月中旬~下旬に決定している。昨年は最低賃金の引き上げに熱心な菅義偉前首相による政治主導で過去最高額の28円で決着。この決定を不服とした経営者側が、採決を求める異例の事態に発展していた。
今回は昨年の反動もあり、労使代表と有識者委員の議論を尊重する形で進められ、客観的な資料に基づく合意形成が行われ、例年よりも長引いていた。10月ごろから各都道府県別に新たな最低賃金を適用するため、地方での審議会を経る必要があり、期限が迫っていた。
コメントする