巨額詐欺実刑の元郵便局長、弁済は15万円 日本郵便「世襲」な
郵便局長への信頼を悪用した巨額の詐欺事件に、被害者は不信感を抱き続けている。事件では、世襲による就任が認められるなど、小規模局長を巡る特殊な人事上の慣例が不正の温床になっていたが、日本郵便は抜本的な対策を講じないままだ。
「深く反省し、しっかり罪を償ってほしい」。実刑判決を受けた上田純一被告(69)について、数千万円をだまし取られたという長崎市の70代女性は語気を強めた。
女性はゴルフ仲間だった上田被告の妻を通じて勧誘を受け、5、6年前から数回、長崎住吉郵便局で現金を預けた。預かり証として渡された証書には局長印が押されており「疑いもしなかった」。共通の友人も何人か被害に遭った。
事件発覚後、日本郵便は被害者への弁償を開始。昨年10月までに被害を認定した59人に実損額として約8億8千万円を補償した。弁護人によると、被告がこれまでに日本郵便に弁済した額は約15万円にとどまる。
女性にも預けた全額が戻ってきたが、不正を長年見抜けなかった日本郵便に対する不信感は根強い。自宅に説明に来た担当者は何度も代わり、警察に被害届を出すために必要な出入金の記録を請求すると一部が黒塗りで開示された。「まだ何か隠そうとしているのかと思った。多くの人がひどい目に遭ったのに誠意が感じられない」と憤る。
検察側の説明などによると、上田被告は1983年ごろから詐取を開始。父親の後を継ぎ、23年にわたって同じ局で局長を務めた。退職後も、息子が局長となった局内の応接スペースを使い、架空の金融商品の勧誘を続けたという。
日本郵便は、不正が放置された要因と認めながら、今も局長の「世襲」や「不転勤」を容認している。同社関係者は「政治力のある全国郵便局長に配慮し、会社は局長の既得権に手を付けられない」と口をそろえる。
九州のある局長は「これだけ大きな事件を引き起こしながら手をこまねいたままでは、いつまでも信頼回復はできない」と嘆いた。
西日本新聞meより転用
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