スリランカ、ウィクラマシンハ首相が大統領に 国民の信頼得られるか
- 国際
- 2022年7月21日
スリランカの議会は20日、ラニル・ウィクラマシンハ首相を新たな大統領に任命した。同国では政府に対する大規模な抗議行動を受け、先週にゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領が国外に逃亡。その後、辞任していた。
ウィクラマシンハ氏は議会では対立候補のドゥルス・アラハッペルマ氏を134対82と大差で下したものの、国民の人気は低いという。
新大統領は今後、経済危機と、数カ月にわたる抗議運動による混乱を収める必要がある。
スリランカでは、食料、燃料、その他の基本物資の価格が高騰。反政府デモが広がっていた。大統領の公邸や政府機関の建物が襲撃される事態になっていた。
ラジャパクサ前大統領は12日夜に軍用機でインド洋の島国モルディヴへ向かい、14日にシンガポールに到着している。
デモ参加者らはまた、ウィクラマシンハ首相の辞任も求めていた。ウィクラマシンハ氏はラジャパクサ一族の盟友で、5月に首相に任命されたばかりだった。
ウィクラマシンハ首相の自宅もデモ参加者に放火されたほか、首都コロンボの首相官邸が襲撃された。
抗議参加者の信頼を得られるか
ウィクラマシンハ首相について多くの国民は、2020年の選挙で自党が大敗したにもかかわらず議会にしがみついている、抜け目のない政治家だと見ている。この党はすべての選挙区は敗北。首相が保持している唯一の議席は、全体の得票数を反映した政党リスト方式で得たもの。
今回の投票では、ラジャパクサ氏が率いていた与党・スリランカ人民自由同盟(SLPFA)の支持を得て勝利をつかんだ。任期は2024年11月まで。
議会での演説でウィクラマシンハ氏は一致団結と、党を超えた協力を呼びかけた。政治的安定を取り戻し、国際通貨基金(IMF)と緊急経済援助の交渉を再開したい考えだ。
しかし、抗議に参加していた国民が同氏を受け入れるかは不明だ。多くのデモ参加者が、ウィクラマシンハ氏をスリランカの経済危機を招いた政治エリートの一員と考えている。
投票が行われた20日、議会の前にはバリケードが張りめぐらされ、結果を待つ群衆の周囲には兵士が並んだ。
しかし抗議する人々はおおむね静かだった。結果が発表されると、主要な抗議デモ地点となっている公園に集まった人々が「ラニルは家に帰れ」と叫んだ。
抗議参加者の多くが、ウィクラマシンハ氏の勝利に失望している。
活動家のジアナ・デ・ゾイサさんはBBCの取材に、「結果には本当にうんざりしている(中略)国民を代表するはずの議員が134人も、国民の要求を無視するなんて」と述べた。
スリランカの基本情報
- スリランカはインドの南方に浮かぶ島国: 1948年にイギリスから独立した。人口2200万人で、その99%をシンハラ人、タミル人、イスラム教徒の3つの民族が占めている
- ラジャパクサ兄弟が何年も政権を握っていた: シンハラ人とタミル人は長年、内戦を繰り広げていたが、2009年に多数派のシンハラ人のマヒンダ・ラジャパクサ首相(当時)がタミル人分離派を下し、一躍英雄となった。弟のゴトバヤ・ラジャパクサ氏は国防相を務めた後、大統領となった。
- 経済危機を受けた抗議運動が広がっている: インフレの高騰により、一部の食品や医薬品、燃料が不足しているほか、計画停電も行われている。一般市民は街頭に出て、多くの人がラジャパクサ一族とその政府を非難し、怒りを露わにしている。マヒンダ氏は今年5月に首相を辞任している
- 大統領の権限:大統領はスリランカの国家元首で、政府と軍のトップだが、議会で与党を率いる首相と多くの行政責任を共有している
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