朝原宣治氏 サニブラウン選手は少し焦って走った感じ ただ勝ち切ったのは強さ
- スポーツ
- 2022年6月11日
「陸上・日本選手権」(10日、ヤンマースタジアム長居)
男子100メートルは、前日の準決勝で世界選手権(7月、米オレゴン州)の標準記録(10秒05)を突破していたサニブラウン・ハキーム(23)=タンブルウィードTC=が10秒08で制し、世界選手権代表に決まった。2位は坂井隆一郎(24)=大阪ガス、3位は柳田大輝(18)=東洋大。東京五輪代表の小池祐貴(27)=住友電工=は4位、桐生祥秀(26)=日本生命=は6位に終わった。2008年北京五輪男子400メートルリレー銀メダリストの朝原宣治氏(49)は、優勝したサニブラウンは「少し焦って走った」と指摘した。
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サニブラウン選手は、自分が想定していたよりも坂井選手との差が開いていて、少し硬くなったと思います。追いかけて走ってしまい、少し焦って走った感じです。
前日と比べて、出だしのところでしっかりと低い飛び出しができていませんでした。伸びやかな走りではなく、思ったほどタイムが出ませんでした。普通に考えると、追い風1・1メートルなら9秒台が出てもおかしくありません。
とはいえ勝ち切ったのは彼の強さです。何があっても自分のレースを貫けるのが一番の強さです。想定よりリードされる状況でも、しっかり1位になるのは力があるからです。普通ならなかなか詰まらない距離を見て、そのままレースが終わることもあり得ます。最後に追いついて抜くのは底力があるからです。
世界選手権に向けてですが、サニブラウン選手は10秒0台ではいつでも走れる状況です。ただ、今は世界の準決勝のレベルが高く、10秒0台後半なら決勝に進むことは結構難しくなってきます。
世界選手権まで時間があるかは分かりませんが、サニブラウン選手からすれば、もっと海外の大会とか、もう少しレベルの高いレースに出ながらレース勘を取り戻していくことでしょう。彼の狙うところは決勝進出だと思うので、そこに向けてもう一段上げていって調整するのではないでしょうか。
決勝で自己ベスト出したのは2位の坂井選手だけです。彼の弱点は本数を重ねていくことでした。今回は克服して、予選、準決勝を経て3本目に自己ベストを出しました。今回、一番自分の良さを発揮できたのではないかと思います。
決勝はスタートの飛び出しが決まりました。初速というのはすごく大事で、ちょうどいい角度で飛び出さないといけないのですが、それがぴたりと決まりました。初速が中盤につながれ、後半まで持ちました。2位に入ったことで自信も得たことでしょう。
3位に入った柳田選手のように10代の選手も力をつけてきています。新しい風がスプリント界に吹いてきたと感じました。(2008年北京五輪男子400メートルリレー銀メダリスト、「NOBY T&F CLUB」主宰)
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