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山縣、桐生、サニブラウンを破った超新星の今 「いつも気を使っていた」少年はなぜ陸上に魅了されたのか


◇日本選手権に向け意気込むデーデー・ブルーノを直撃

陸上の東京五輪代表選考会を兼ねた昨年の日本選手権男子100メートルで、並み居る9秒台スプリンターたちを破った男がいた。彗星(すいせい)のごとく短距離界にあらわれ、東京五輪400メートルリレー代表(補欠)のデーデー・ブルーノ(22)=セイコー。今季はシーズンインからなかなか調子が上がらないままだが、6月9日開幕の日本選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)で、再び輝きを取り戻そうと意気込んでいる。

◇    ◇

日本記録(9秒95)保持者の山縣亮太(セイコー)、桐生祥秀(日本生命)、小池祐貴(住友電工)、サニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)…。10秒の壁を破った4選手が並んだ、昨夏の日本選手権決勝の舞台にデーデーはいた。

「自分の動き、腕振りが前半からタイミングが合っていて、どんどんピッチも上がっていって。もう充実していたという感じですね」。10秒19の自己ベストを出し、多田修平(住友電工)に次ぐ2位でゴールした“下克上レース”を振り返る。全国的に無名の存在が、東京五輪代表候補に名乗りを上げた瞬間だった。

東海大を卒業し、新社会人となった今季も活躍が期待されていたが、調子が上がってこない現状に苦悩する。

「今は足先だけで走っちゃっている感覚があって。うまく体重を乗せていない」

100メートルは初戦の4月に出した10秒46が今季最高記録で、世界選手権(7月、米オレゴン州)代表選考を兼ねた日本選手権に向け、「世界に挑むとか言う前に、日本でも何もできていない状態」と不安を抱く。そんな中で、自らを奮い立たせる言葉がある。「苦しくなってからが勝負」。長野・創造学園高(現松本国際高)時代、陸上部の山崎豊茂監督が口にしていた言葉だった。

過去にも挫折を味わった。小学2年からはじめたサッカーは、「スピードだけじゃ勝負できないし、技術もハイレベルじゃない。闘志あふれるような性格でもない」と、限界を感じて高校1年で部を去った。

その後、友人の誘いで入った陸上部では、高校2年から3年までの1年間で100メートルの記録が10秒88から10秒45へと飛躍。東海大では400メートル日本記録保持者の高野進監督の下、技術やレースに挑む前の心構えなどを教わり、さまざまな面でハイレベルな境地へと引き上げられた。

失敗も成功も経験したからこそ、「今の現状をどう受け止めるかが大事で、この先の将来も変わってくる。ここから本当に強くなれるのか、終わってしまうのか。それは自分次第」と実感する。

自らと同じように海外にルーツを持つ子どもたちに、希望を与える存在でありたいという夢もある。父がナイジェリア人、母が日本人のデーデーは、見た目の珍しさから幼少期から好奇の視線を集めていた。「だから変なことをしないよう、いつも気を使っていた」。そんな少年が陸上を始めたのは、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)やサニブラウンらの活躍に感化されたからだ。

「子どもたちには可能性がある。興味のあることには挑戦してほしい、とすごく感じる」

もがいて苦しんだ先に光がある。そう信じて突き進む。

◇ブルーノのあれこれ

★誕生日 1999年10月7日

★出身地 長野県松本市

★サイズ 身長177センチ、体重81キロ

★本名はデーデー・ブルーノ・チクヮド凌 「凌には他の人をしのぐ、優れた人になってほしいという思いが込められています。大学3年の1年間だけ本名で選手登録をしたけれど、長くてめんどくさいので短くしています」

★趣味 「甘いものに合うコーヒーを入れたり、スイーツを作ったりはよくする。チーズケーキやフォンダンショコラとか。2月のバレンタインシーズンも、誰かにあげることなく、自分で作って食べて満足しています(笑)」

中日スポーツより転用


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