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ムーミンの国の危機意識 フィンランドの地下シェルターを見た


© 朝日新聞社 非常時にはここに簡易トイレが並び、カーテンで仕切られる。水洗式ではないが天井には換気の設備がある=2018年3月26日、フィンランド・ヘルシンキ市内、浅倉拓也撮影

ロシアによるウクライナ侵攻で、1300キロ以上にわたってロシアと国境を接するフィンランドが、これまでの軍事的中立を破って北大西洋条約機構(NATO)へ加盟するかどうかが注目されている。森と湖の国で、ムーミンのように穏やかで優しいイメージがある一方、フィンランド国民は軍事的な危機に対し、これまでも高い防衛意識を保ってきた。首都ヘルシンキの地下に張り巡らされた広大な地下シェルターはその象徴でもある。

記者がヘルシンキ中心街メリハカ地区にある地下シェルターを訪れたのは4年前。朝日新聞GLOBEの特集「ロシアの流儀」の取材の一環だった。

市の「民間防衛」担当者の案内で、地下駐車場の入り口のようなところから車で進んで行くと、アリの巣を思わせるトンネルが縦横無尽に広がっていた。

ヘルシンキの地下は強固な岩盤で、大規模な公共シェルターの多くは、チーズのように穴のあいた岩をさらに削り、表面をコンクリートで固めたものだという。岩肌がむき出しになった壁は、テーマパークの張りぼての洞窟を思わせた。

このシェルターの面積は約1万5千平方メートルで、収容人員は6千人。シェルター内にはさまざまな施設があり、普段から駐車場のほか、フットサルのコート、トランポリンやスナックコーナーがある子どもの遊園地などに使われている。

空調設備や水道設備も完備され、非常時にはここで市民らが生活できるようになっている。各所に組み立て式のトイレや3段ベッドも大量にストックされていた。

シェルター内の各エリアが、爆撃に耐えられる強固な扉で仕切られているのも特徴だ。日本でシェルターと言えば自然災害を考えるかもしれないが、ここでは戦争を想定していることをあらためて認識させられた。

こうしたシェルターは、一定規模の民間ビルなどにも設置が義務づけられている。ヘルシンキ市内には、市民だけでなく仕事や旅行で訪れている人たちを十分に収容できるだけのシェルターがあるという。

担当者によると、冷戦が終わって時間が経つにつれて市民の危機感は薄れ、シェルターの設置義務を緩和する動きもあった。ところが「欧州で相次いだテロ事件や、2014年のロシアによるクリミア併合などをうけ、シェルターの役割は再び見直されている」と話していたのが印象的だった。(浅倉拓也)

朝日新聞社より転用


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