神奈川県警の汚職事件、元警部補の被告「県内全署でビール券もらっている」
神奈川県警の遺体搬送業務を巡る汚職事件で、受託収賄罪に問われた元警部補の加藤聖被告(48)の初公判が15日、横浜地裁(青沼潔裁判官)であった。加藤被告は起訴事実を認めた一方、葬祭業者との癒着は県警の全警察署であったなどと語った。審理は即日結審し、検察側が懲役2年6月を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決が相当と主張した。判決は3月15日の予定。
起訴状では、加藤被告は県警大和署に勤務していた2019年3月10日頃~20年1月30日頃、死因や身元の調査を担当した遺体の搬送業務について、神奈川県大和市の「林間葬祭」が請け負えるように依頼を受けて便宜を図った見返りに、現金127万円と商品券137枚(68万5000円相当)を受け取ったとしている。
被告人質問で加藤被告は、林間葬祭に仕事を回すには部下の協力も必要で、信頼を集める必要があったとし、「もらった現金は部下との飲み代などに使った」と供述。また、「私の知る限り、県内の54署すべてで、葬祭業者からビール券をもらっていると思う」とも語り、「不正が行われているのに見て見ぬ振りをしていた行為、自分の行為について県民に謝罪したい」と頭を下げた。
検察側は論告で、加藤被告の紹介により林間葬祭が搬送を請け負う遺体は5倍に増えたなどと指摘し、社会の信頼を失墜させる悪質な犯行だと主張した。弁護側は、被告が受け取った現金のうち、自身のためだけに使ったのは総額30万円相当程度と低額であり、遺体搬送を巡る悪習は被告に限らず、県警内で根付いていたなどと訴えた。
また、この事件で贈賄罪に問われた元警部補の河合博貴被告(65)と、妻で林間葬祭の実質経営者の女(60)に対し、横浜地裁は15日、いずれも懲役1年6月、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)の判決を言い渡した。青沼裁判官は、両被告から加藤被告への便宜供与の依頼や贈賄を事実と認定。「警察の職務に対する社会の信頼は害された」とした一方、「両被告の供述によれば、加藤被告の積極的な関与があった」などと述べた。
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