【独自】「遠山先生のお声がけ案件ですね」…支店から1000万円融資の電話
- 政治・経済
- 2022年2月10日
元公明党衆院議員の遠山清彦・元財務副大臣(52)が貸金業法違反で在宅起訴された事件で、遠山被告側の仲介によって日本政策金融公庫から融資を受けた複数の企業が読売新聞の取材に応じ、「遠山先生のおかげで予想を上回る融資を受けられた」などと証言した。公庫が議員案件のマニュアルに基づき、一般の顧客とは異なる対応をしていた疑いが浮上し、専門家からは「融資の公正性に疑念が生じかねない」との批判も出ている。(西原寛人、徳山喜翔)
■「限度」超え
「こんなに早く1000万円も融資を受けられるとは思わなかった」。東京都内の建設会社を営む70歳代男性は、知人を通じて依頼した遠山被告側の口利きの「効果」に、驚きを隠せない様子で語った。
男性は2020年5月、新型コロナウイルス対策の特別融資として公庫から1000万円を借りた。希望額には届かなかったが、担当者から「これが限度」と言われて断念。会社はコロナ禍で業績が悪化し、従業員の給料の支払いが遅れたが、他の金融機関への融資申し込みは軒並み断られた。
資金繰りに窮する中、知人から「財務副大臣の遠山さんが動いてくれる」と教えられ、同年11月頃、「融資額の15%を手数料で支払う」という条件で仲介を依頼。融資申込書を公庫に郵送したところ、1週間後に支店幹部との面談が実現し、さらに約1週間後に1000万円の追加融資決定の通知書が届いたという。
男性は東京地検特捜部から任意の事情聴取を受け、一連の経緯を供述したという。取材に対し、「遠山議員の口利きが効いたのではないか」と振り返った。
■電話で1000万円
この男性のように、遠山被告側から仲介を受けた企業や個人事業主に対し、公庫は全体の2割にあたる34支店で「議員案件」として特別な対応を行い、計37億円超を融資していた。
融資の申し込みすらしていないのに、公庫側から融資額を告げられたというケースもある。
「遠山先生のお声がけがあった案件ですよね。1000万円を融資します」。関東地方で設備会社を営む男性は20年8月上旬、地元にある公庫支店から突然電話があり、「えっ」と声を上げてしまったという。
その数日前、男性は東京都内の喫茶店で、知人から紹介された環境関連会社役員の牧厚被告(74)(貸金業法違反で在宅起訴)と面談していた。「遠山議員に口利きしてもらえれば、公庫から融資を受けられる」。牧被告はその場で遠山被告の秘書に電話をかけ、「融通してやって」と伝えたという。
8月下旬、融資額が口座に振り込まれた。面談は一度もなく、審査用の書類提出もなし。男性は「うちの経営状況ではせいぜい500万円がいいところだと思っていた。やはり財務副大臣の力は違うと思った」と語った。
■国会議員マニュアルで優先対応
複数の関係者によると、国会議員案件を想定した公庫内部のマニュアルは複数の部門で作成されていた。
このうち表紙に「マル秘」と記され、支店の課長級以上の幹部限定で共有されていたマニュアルには、議員側との窓口を「課長以上」とし、審査結果を速やかに国会議員側に連絡するといった特別な手順が定められているという。
特に、衆参両院で公庫業務に関連する委員会に所属する議員などからの紹介案件については、「報告を徹底する」など一層厳格な内容になっており、財務副大臣だった遠山被告もこれに分類されていたとみられる。
特捜部の事情聴取を受けた公庫のある幹部は、「マニュアルに基づいた(議員案件の)特別な取り扱いは、長年にわたって行われてきた」と供述したという。
ガバナンス(組織統治)に詳しい八田進二・青山学院大名誉教授(監査論)の話「政府系金融機関にはより高い公平性が求められ、国会議員の紹介があったケースにも組織として毅然(きぜん)と対処しなければならない。公庫がマニュアルを作って通常業務のように行っていたとすれば、融資の公正さをゆがめていたと言わざるを得ない。トップが『政治家の口利きから決別する』というメッセージを出し、一連の問題に対する第三者の検証を行った上で、抜本的な体制の見直しが必要だ」
読売新聞より転用
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