4層構造の銅マスク、2分でコロナ感染力99%減…企業と医科大が共同開発
- 政治・経済
- 2022年2月1日
奈良県香芝市の「やまと真空工業」が金属の真空蒸着技術を使い、新型コロナウイルスの感染力を失わせる「不活化」の効果を持ったマスクを完成させた。マスクに付着したウイルスを2分で約99%不活化させるといい、県立医科大の検証で、科学的な裏付けを得た。同社専務の岩本策三(かずみ)さん(42)は「多くのみなさんに日常的に使ってもらえるものにしたい」と話す。(前川和弘)
「やまと真空マスクプレミアム」は、同社と県立医科大が共同開発した。独自の金属配合で、新型コロナに高い不活化効果がある銅合金を作り上げ、その合金を蒸発させ、分子を不織布にコーティングすることで、ウイルスの感染力を1分で約10万分の1まで減少させることに成功した。
マスクは4層構造で、抗菌加工された層や通気性がよく肌触りのよい不織布などを重ねている。この構造で、金属アレルギーの人も使用でき、着け心地の向上や医療用としての品質も兼ね備えたものにした。
同社がマスク生産に乗り出したのは、マスクが全国的に不足していた2020年4月。銅にウイルス不活化の効果があるとわかり、金属を蒸発させ表面に付着させる技術を持っていたため、「銅をマスクにコーティングできたら予防効果の高いものができる」(岩本さん)と考えたという。
全くの異業種参入だったために苦労もあった。マスクの素材や製造機械などを手に入れようにも、当初は業者に門前払いされたことも。何度も工場を訪ねて交渉を重ね、製造にこぎ着けると、町工場として持っていたコーティングの技術を生かし、抗菌作用のある不織布マスクを作り上げた。
今回、販売をスタートさせる銅を使ったマスクの開発は21年3月に本格的に着手。県立医科大と協力し、約3か月かけてより不活化効果の高い銅の配合を見つけ出した。昨年12月には、同大学による実験で、それまでの株だけでなく、変異株のデルタ株に対しても不活化効果が認められ、オミクロン株でも、同様の効果が期待できるという。
新たなマスクの発売は2月上旬の予定で、同社ホームページや百貨店などで販売される。また、今後、子ども向けの小さいサイズの生産も検討している。
岩本さんは「まだワクチン接種が始まっていない子どもたちのために安全なマスクを作り、安心につなげたい」と意気込んでいる。
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