『ザ・ベストテン』、楽曲の魅力を最大限に引き出した「一期一会のセット」
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- 2022年1月17日
1978年から1989年にかけて、伝説の音楽番組が放送されていた。毎週、番組で集計したヒット曲ランキングを紹介し、歌手たちが生で歌を披露する、TBS系の『ザ・ベストテン』だ。1981年9月には番組史上最高となる視聴率41.9%を記録している。
『ザ・ベストテン』が始まった1978年は、NHK紅白歌合戦でトリを飾ったのが沢田研二(73才)と山口百恵。歌謡曲が全盛期を迎える予兆があった。同番組で美術デザイナーを務めた三原康博さん(84才)は、こう話す。
「あの頃、阿久悠が沢田研二の歌を作詞し、阿木耀子が山口百恵を、松本隆が松田聖子を、という感じで毎回いろんな曲が世に出てきた。それを毎週受け止めて解釈し、歌手の衣装には触らないけれど、毎回違う美術セットで新しい演出を考えたのです」
暗黙のうちに、番組美術制作者と歌い手・作詞家・作曲家の間に、いい緊張感が生まれていた。質の高い美術セットが、この番組の人気を支えた。
では、当時の『ザ・ベストテン』を彩った“名セット”を紹介する。
●山口百恵『美・サイレント』
1979年3月22日放送で6位の『美・サイレント』。セットは顔が動く仕組みで、百恵はスリットの入ったスカートで登場。「山口百恵はどう撮っても"絵になる人"でした」(三原さん・以下同)。
●小泉今日子『なんてったってアイドル』
1985年12月5日の初登場8位から、4週目に1位を獲得。3位だった1986年1月9日放送のセット模型。「ラスベガスなどにある看板をイメージしました。このセットはぼくの中でも代表作だと思っています」。
●ピンク・レディー『UFO』
番組初回(1978年1月19日放送)の1位がこの曲。3週連続1位を記録。初回ではケイ(増田恵子、64才)が大ファンだった故・田村正和さんがお祝いに駆けつけたが、ケイ本人は「覚えていない」という。巨大な手が上下するセット。
●平尾昌晃・畑中葉子『カナダからの手紙』
デュエット・ソングの定番。1978年2月23日の初登場10位から、最高順位は5位。手紙をイメージした美術セットや、長距離恋愛というシチュエーションに合わせて、2人が別々の場所で歌うこともあった。
●中森明菜『ミ・アモーレ』
8週連続で3位以内(1位1回)をキープした明菜の11枚目のシングル曲。1985年4月4日放送のセット模型。「この歌って、本当にいい歌なんですよ。だから自分も乗って製作し、非常によいものができました」。
●渡辺真知子『迷い道』
1977年11月に発売された渡辺真知子(65才)のデビュー曲。1978年3月16日の初登場9位から、最高順位は6位。『迷い道』をイメージしたセットのデザイン画。同年6月には『かもめが翔んだ日』もランクイン。
●沢田研二『カサブランカ・ダンディ』
1979年2月22日、初登場5位。3月8日放送で1位を獲得したほか、11週連続ランクイン。アメリカ国旗と自由の女神をイメージしたセットのデザイン画。
取材・文/北武司 セットデザイン/三原康博
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