大企業に強い「圧力」、賃上げ・設備投資促す…税制「アメとムチ」与党改正大綱
- 政治・経済
- 2021年12月11日
自民、公明両党が10日決定した2022年度の与党税制改正大綱は、企業に関わる項目が並んだ。企業内には巨額のお金が蓄積されており、賃上げや設備投資など、経済を底上げする前向きな使い方に転換させる狙いがある。ただ、同じような措置はこれまでも行われてきており、効果の検証が欠かせない。
■消極的なら優遇除外
■内部留保
企業の利益の蓄積である「内部留保」は21年3月末時点で過去最高の484兆円に積み上がっている。今回の大綱では、法人税率を約30%まで段階的に下げてきたことに言及。こうした措置にもかかわらず、お金が企業内にとどまり、賃上げや設備投資へは回らなかったと苦言を呈した。
今回の改正では、大企業を対象に、これまでより強い「圧力」をかける。22年度に0・5%以上、23年度以降に1%以上の賃上げを行わず、設備投資も不十分な場合は、「研究開発減税」や5G整備促進減税など、一部の優遇措置を認めない。「アメとムチ」の対応で企業の行動を促したい考えだ。
改正の焦点となった賃上げ税制も、適用に条件を付けた。企業は従業員の賃上げなど、多様な利害関係者「マルチステークホルダー」に配慮した経営を宣言しなければならない。公明党の西田実仁税制調査会長は、「制度を受けられるのは宣言をしたところだ。大綱にあるとおり、政治としてもこの税制がもたらす効果をしっかり注視しなければならない」と述べた。
■支援策
新型コロナウイルスの感染拡大の「第6波」の懸念が拭えないことから、企業への支援にも目配りする。
コロナ禍で業績が悪化している航空会社への支援策は1年延長する。国内線の航空機の燃料にかかる航空機燃料税は、本来の水準は1キロ・リットルあたり2万6000円だが、22年度も1万3000円に抑える。
企業の交際費に関する税務上の特例措置も23年度末まで延長する。企業に交際費を使ってもらうことで、苦境の飲食業界を下支えする。中小企業の場合、「接待飲食費」の50%を税務上の経費(損金)に算入するか、年間800万円を上限に交際費の全額を損金に算入するかの、いずれかを選択できる。
■出資促進
経済成長の原動力の一つとなる新興企業への支援では、出資促進税制の期間を延長する。
出資先の企業の要件は、大企業などのグループ傘下に入っていない非上場企業で、設立から10年未満としていたが、15年未満に広げる。5年以上としていた株式の保有期間も「3年以上」に縮小する。幅広い企業に出資できる環境を整え、革新的な技術やサービスの創出を支える。
社会や経済のデジタル化に欠かせない高速・大容量の通信規格「5G」は、基盤整備を加速させるための減税を24年度末まで3年間延期する。対象を高度な基地局に絞ったうえで、法人税から差し引ける割合は現在の15%から徐々に引き下げて、計画を前倒しするよう促す。
読売新聞より転用
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