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「食べるラー油」一発屋じゃなかったブームその後 日本の食卓にどのような影響を与えたのか


ブームになった「食べるラー油」はその後、どれほど売れているのでしょうか(写真:coco/PIXTA)© 東洋経済オンライン ブームになった「食べるラー油」はその後、どれほど売れているのでしょうか(写真:coco/PIXTA)

毎年、数多くのブームとヒット商品が生まれ、消えていきますが、それらの「その後」については意外と知られていません。完全に消えたものもあれば、生活に定着していったものも多くあります。

中でも食品分野では、過去のブームが、現在でも食の楽しみ方に影響を与えているものがたくさんあります。そこで、食品分野で過去に大ブームとなったものに着目。ブームが起きた際の動向に加え、その後、その商品が日本人の食生活にどのような影響を与えていったのかを分析していきます。

おかずへと進化した「食べるラー油」ブーム

まず取り上げたいのが、2008年から2010年にかけて起きた「食べるラー油」ブーム。もともとラー油と言えば、ギョウザなどを食べるときにアクセントとして、しょうゆやタレに垂らして食べるのが定番の調味料でした。

一方の「食べるラー油」には、フライドガーリックやフライドオニオンなどの具材が入っており、ごはんや豆腐にかけて食べるという楽しみ方です。ラー油の刺激を手軽に味わえることに加え、「ラー油がおかずになる」という意外性も話題となり、人気になったと考えられます。

一時は小売店で品薄状態となり、店舗によっては購入点数に制限がかかるほどだった「食べるラー油」ブーム。どれほどの盛り上がりだったのかを見るために、インテージ小売店パネル調査「SRI」から、ラー油の市場規模の推移を確認します。SRIとは、全国の小売店から収集した販売情報データを基に、市場規模を推計するものです。

2009年に発売された食べるラー油に牽引され、ラー油の市場規模は前年比140%まで成長。さらに各社から相次いで食べるラー油が発売されブームの勢いは強まり、2010年には前年比685%まで伸長しました。市場規模は、2008年の13億円から2010年の121億円へと10倍近くにまで拡大したのです。

2011年以降は、ブームの反動により市場規模が縮小する局面はあったものの、2020年もラー油の市場規模は41億円と、ブーム前の13億円の約3倍の規模を維持しています。

2020年の調味料の市場規模は、大きいものから、ショウガ82億円、ワサビ80億円、ニンニク64億円となっており、ラー油の市場規模も決して小さくはなく、代表的な調味料のうちの1つであると言えるでしょう(ショウガ・ワサビ等は、チューブやびんに入った各種調味料のデータであり、生鮮のものは対象外)。

それでは、ラー油は現在、どのように使用されているのでしょうか。インテージ食卓調査「キッチンダイアリー」から、ラー油を使用したメニューについて、2020年の出現率上位10位を見てみます。キッチンダイアリーとは、2人以上家族の主家事担当者の女性を対象とした、食卓情報データです。

2位のおにぎりと、5位の冷奴は、食べるラー油が提案していた食べ方です。食べるラー油は、あまりにも市場が急拡大したため、「一発屋」のように一時的なブームで終わってしまった印象を持っている人も少なくないかもしれません。

ところが、食べるラー油で広がった食の楽しみ方は、ブームから10年以上たった2020年でも定着していることがわかります。

1人でも鍋を楽しめるようにした「個食鍋つゆ」

続いて、「個食鍋つゆ」のブームに着目します。鍋料理は家族で囲んで楽しむものといったイメージがあり、従来は鍋つゆのパック商品も3~4人用の大型のものが中心でした。

単身世帯が増える中、「1人でも鍋を楽しみたい」という需要もあり、2012年に発売されたのが個食鍋つゆ。固形状で小分けにされており、1つだけ使用することで、1人でも鍋料理を手軽に作れるというものです。

個食鍋つゆの市場規模の推移をみると、2013年に前年比431%と大きく伸長した後も増加を続け、2020年には2012年の約16倍の82億円にまで成長しました。鍋つゆ市場全体のうちの金額構成比も2020年には20%を超えています。

2012年以降、各社の参入により、固形状のものだけではなく、液状のポーションタイプのものなど形状も多様化しました。

また、味の種類も、キムチ鍋や寄せ鍋などの定番のものだけではなく、豆乳鍋や魚介鍋、上図ではその他に含まれるトマト鍋やカレー鍋など幅広くなっています。形状や味などさまざまな商品が販売されたことで、個食鍋つゆの商品の種類数は2020年には100を超えています。

個食鍋つゆを買っているのは誰?

このように市場拡大を続けてきた個食鍋つゆは、どういった層に購入されているのでしょうか。

インテージ消費者パネル調査「SCI」から、世帯構成別の購入率の推移を確認してみましょう。SCIとは、全国15〜69歳の男女約5万人のモニターから、継続的に収集している日々の買い物データです。購入率では、モニターのうち、個食鍋つゆを購入した人の割合を見ています。

どの世帯構成でも購入率は増加傾向となっています。2020年の購入率では、単身・夫婦のみ世帯が20%を超えているのに続いて、2世代同居世帯で16.1%、3世代同居世帯でも13.9%まで伸長しています。

単身世帯以外でも、共働きの世帯など家族1人ひとりの生活様式によって家庭で食事する回数やタイミングはばらばらで、用意する食事の量もその時々で異なっています。

小分けにされた個食鍋つゆは、そのときに必要な量だけ使用できることから、単身世帯に限らず、家族人数が多い世帯でも人気となったようです。個食鍋つゆは、世帯構成や場面を問わず、鍋を楽しめるようにした商品であると言えるでしょう。

今回は、過去のブームとして、食べるラー油と個食鍋つゆを取り上げました。一過性のブームとして終わらなかった両者に共通する特徴は、簡便さだけではなく、食の楽しみ方を広げたことが挙げられます。

コロナ禍でもオートミールや麦芽飲料など、ヒット商品が次々と登場していますが、生活に定着していくのか、それとも一時のブームで終わるのか――。今後の調査データから浮かび上がってきそうです。

東洋経済オンラインより転用


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