スノーボード男子スロープスタイル&ビッグエア・浜田海人「本気で金メダルを目指す」…真冬の大冒険 ~Roa“道” to 北京~
- スポーツ
- 2021年11月10日
来年2月4日開幕の北京冬季五輪へ各競技の代表選考も本格化していく。有力道産子選手を紹介する「真冬の大冒険 ~Roa“道” to 北京~」2回目はスノーボード男子スロープスタイル(SS)&ビッグエア(BA)で初出場を狙う、札幌市出身の浜田海人(22)=ムラサキスポーツ北海道=。3月の世界選手権(米コロラド州アスペン)で両種目5位入賞のホープがスポーツ報知のインタビューに応じ、冬の五輪でも“横乗りブーム”を巻き起こすと誓った。(取材・構成=川上 大志)
夢見た舞台が、手の届く所まで近づいてきた。浜田は昨季世界選手権で一躍メダル候補にまで躍り出た。W杯成績も加味される五輪代表は来年1月中旬まで発表を待つが、「一戦一戦、積み重ねることが五輪にもつながるはず。楽しむ姿勢を忘れずに」。優しい表情からにじみ出る“自然体”こそ、22歳の強みでもある。
選手の大半が掛け持ちするスロープスタイルは14年ソチ、ビッグエアは18年平昌から五輪正式種目となった。「見て楽しいのは個性が出るSSかも。BAは着地の美しさとか体操競技に似た所もある。でも得意不得意はない。どちらもやれてこそ強い選手」。10月23日のBA・W杯初戦(スイス)から一時帰国し、現在は同第2戦(12月4日、米国)へ練習拠点の宮城で調整する。トリックの派手さで上回るコーク(空中で頭から斜め軸に回る)はもちろん、より技術が問われるフラット(地面に対して並行軸で回る)にも人一倍こだわる。「世界で上を目指すため新技も挑戦している」と向上心は尽きない。
スノボとの出会いはわずか5歳。スキー場で他の子が座って楽しむ子供用ソリにいきなり立ち乗りし周囲を驚かせた。「この子はスノボをやるべきなのかも」。母・美香さんも驚いた天性の素質が、浜田少年の道を決定づけた。
札幌市のフッズスノーエリアなどで腕を磨き、中2時の14年に世界大会初出場初優勝。早くから頭角を現したが、その後の歩みは順風満帆ではなかった。初参戦となった16年1月のW杯(米国)では大会前練習で転倒。脳震とうに加え軸索損傷の診断を受け、W杯デビューを目前に帰国。負傷も響き、W杯デビューは19―20年まで待った。「同世代で上位だったはずが滑れない期間に周りに追いつかれ、差が開いて。正直焦っていた」。平昌五輪もテレビ観戦。1歳下で子供の頃から共に練習してきた大久保勇利(21)の雄姿に「正直めちゃくちゃ悔しかった。でも、頑張れば五輪に行けるんだと奮起できた」と振り返る。
コロナ禍で試合も重ねられず20―21年には全日本チームからも落選した。海外遠征も多い競技で自費参戦の負担は大。過去の賞金を切り崩す傍ら、所属のムラサキスポーツやボードメーカー・サロモンの支援で遠征を行えた。そして3月の世界選手権で両種目ともW杯と合わせ自己最高の5位。「昨季から失うものはないと吹っ切れて。北京でも戦うようなフルメンツ。表彰台が見えた中で失敗しての5位は悔しかったけど、手応えも深まった」。周囲への感謝と結果への渇望は、大事な今季の糧となっている。
今夏の東京五輪では同じムラサキスポーツ所属の14歳、女子スケートボード・ストリートの西矢椛が初出場で金メダル。周囲の反響も大きかった。「練習の合間にテレビにくぎ付けで。すごいな、格好良いなって。4年に一度の五輪は競技アピールにもなる。雪上競技はやっぱり北海道が強くないと。今の全日本男子で道勢は僕だけ。活躍しないとダメだと思う」。22歳にして自覚も人一倍。次は自分も、と決意は強まっている。
競技の未来にも視線を向けながら、初五輪の道は自らの力で切り開く。「東京五輪後に『この波は絶対僕らにも来る』と皆で話していた。“横乗りスポーツ”の熱を冬も必ず。本気で金メダルを目指します」。市が招致を目指す故郷・札幌での30年五輪出場も描ける22歳が、真冬の北京から大きな一歩を踏み出しにいく。
◆浜田 海人(はまだ・かいと)1999年10月14日、札幌市生まれ。22歳。5歳でスノーボードを始める。札幌中の島小、札幌中の島中、札幌新陽高を経て、ムラサキスポーツ(北海道)に所属。中2時のジュニア世界大会「ワールド・ルーキー・ツアー」スロープスタイルで優勝。高1時にはユース五輪(ノルウェー・リレハンメル)出場。好きな北海道グルメはスープカレー。162センチ、56キロ。
◆スノーボードのスロープスタイル、ビッグエア 14年ソチ五輪から採用のスロープスタイルは、700メートル前後の滑走斜面に連続的に設置されたジャンプ台やレール、ボックスのアイテムを利用し、選手がコースを選択しながらトリックを重ねる。後半のジャンプセクションでのトリック難度も点数を左右する。18年平昌五輪から採用のビッグエアは、巨大なキッカー(人工ジャンプ台)でトリックの高さや難度、完成度を競う。一つ一つのジャンプ飛距離が大きく着地も重要。ともに1人ずつ滑走で採点方式にて順位が決まる。
◆スノーボード男子SS・BAの五輪切符のゆくえ 国別最大枠は4。全日本スキー連盟の派遣推薦基準は20―21年および21―22年における世界選手権とW杯で、〈1〉3位以内の成績を1回以上(20―21年のみ)〈2〉決勝進出者(12位以内)〈3〉12位以内の成績を1回以上。今季W杯を踏まえ来年1月中旬頃発表予定。12月4日・BA(米国)、来年1月1日・SS(カナダ)、同8日・SS(米国)、同15日・SS(スイス)が発表までのW杯として予定される。
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