コロナで失業長引く女性、急増34万人 「事務職の仕事、見つからない」
- 政治・経済
- 2021年10月27日
新型コロナウイルス感染拡大を機に、失業が長引く女性が急増した。総務省の労働力調査では、4~6月の3カ月平均で失業期間が6カ月を超えた女性は34万人に上り、昨年平均の28万人を上回る。昨秋から高止まりしており、支援団体は「女性の失業は子どもの教育環境や家族関係の悪化につながる」と国の支援の必要性を訴えている。
「感染拡大で、希望する事務職の求人が目に見えて減っていった」。東京都内で暮らす30代のシングルマザーは、4カ月勤めた税務署での短期アルバイトが昨年4月に契約期間満了で終わると、その後8カ月にわたって仕事が見つからない日々を過ごした。コロナ感染が拡大する昨春までは事務系の派遣社員などで生計を立てており、引き続き派遣会社の紹介する求人に応募したが数十社から落とされた。その間、事務系の職業訓練学校に通って簿記や英語での会計を学んでも状況は好転しなかった。
しかたなく、今は100円均一の店でレジ打ちのアルバイトをして家計をつなぐ。手取りは月10万円程度で、コロナ前から半減。「子どもの教育費をためるためにも転職したい。何回も書類選考で落とされ、『自分のせいなのかな』と落ち込んでしまう」と話す。
この女性のように、求職しているにもかかわらず失業が長く続く女性の増加が深刻だ。総務省の労働力調査では、失業期間が6カ月超の女性は、昨年7~9月から増え始め、昨年10~12月34万人▽今年1~3月36万人▽4~6月34万人と高止まりしている。月末の1週間に求職活動をしていないと「失業者」とはみなされないため、実際にはもっと多いとみられる。
また、失業期間が1年を超える人のうち、非正規労働者の割合は約5割を占める。厚生労働省の担当者は「コロナで打撃を受けた飲食、宿泊業は非正規の女性が多い。一つの求人に男女が応募した場合、男性が優先的に採用されるケースもあるのかもしれない」と分析する。
8月の有効求人倍率は1・14倍。1人の求職者に対して、求人募集が1件以上ある状態だが、分野別にみるとばらつきがある。介護や建設工事関連は3~8倍の一方、一般事務では0・28倍だ。コロナ禍で低下した求人数は回復傾向にあるものの、別の厚労省の担当者は「失業前と同じ職種に戻りたいという希望を持っている人が多いようだ。また保育園の休園などで求職活動がままならない場合もある」と話す。求人と求職の条件がかみ合っていない可能性がある。
失業の長期化が、困窮につながる。認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」事務局の小森雅子さんは、「昨年に比べて困窮の度合いが高まっていると感じる。インターネットの通信料が払えなくて、オンラインで子どもの授業が配信されても見られないなど、影響は子どもの教育にも及んでいる」と強調する。
コロナ前から生活困窮者への食料配布を続けている認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」によると、60~80人だった食料を受け取る人が今は400人に上る。そのうち女性は2割で、子ども連れも目立つようになったという。大西連理事長は「コロナ前から低収入だった人が職を失い、見つからない状態が続いているため、困窮は深刻。職業訓練給付金の引き上げや失業手当の給付日数の拡充など、国の支援が必要だ」と訴える。
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