「レスリング界のドン」寂しい引き際 長期政権も、不祥事で後手に
- スポーツ
- 2021年10月2日
「レスリング界のドン」が18年に及んだトップの座に終止符を打った。日本レスリング協会の福田富昭会長(79)が1日、退任。2003年から会長として情熱と金を注ぎ込んで競技の発展を支えてきた功労者だが、長すぎる在任は組織をゆがめ、近年は相次ぐ不祥事で後手に回っていた。
豪快で世話好き。頼られたら絶対に断らない親分肌。昭和の頑固おやじ……。近い人たちは福田氏の人柄をそんな風に表現する。リオデジャネイロオリンピック(五輪)前年の世界選手権で日本選手の成績が振るわないと、「会長の責任」と突如丸刈りにして会見に現れ、報道陣の度肝を抜いたこともあった。
協会長として臨む最後の国際舞台となった今年8月の東京五輪も、らしさは健在だった。海外から来日した約100人の関係者にレスリングの服やタオル、バッグ、日本のウイスキーといったお土産を用意した。面白いのは国際連盟の役員も、末端のスタッフも、中身を変えなかったことだ。
「福田さんは肩書で差をつけることが大嫌いだから」と長年、福田氏の通訳を務めてきた古賀ターニャさんはいう。「物欲は全然なくて、色々な人にすぐ物をあげてしまう。だから海外の人たちから『フクダ、フクダ』と、いつも頼られた。それは最後まで変わらなかった」
学生時代から家族ぐるみの付き合いだ。古賀さんの父ががんで闘病していた約50年前、福田氏は「輸血に必要だから」と後輩のレスリング部の学生らを連れていって献血させ、毎日病室を見舞ったという。
一番つらい時に寄り添ってくれたことを古賀さんは忘れない。「福田さんだから支えたい、という人はレスリング界に大勢いた」
朝日新聞社より転用
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