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ホンダ、「2000人早期退職」にみる組織変革の真意 CASE対応へ備え、4輪事業の見直しは待ったなし


日本で2020年10月末に発売した「ホンダe」。ホンダにとって初の量産型EVとなる(写真:ホンダ)© 東洋経済オンライン 日本で2020年10月末に発売した「ホンダe」。ホンダにとって初の量産型EVとなる(写真:ホンダ)

ホンダが“脱エンジン”に向け、一歩ずつ前に進んでいる。

8月上旬、同社が2021年度から新たに導入した早期退職制度に、2000人以上の社員が応募したことが報じられた。ホンダにとって国内で働く正社員約4万人のうち5%に当たる。

「ライフシフトプログラム」と呼ばれるこの退職制度は55歳以上64歳未満が対象。応募者には通常の退職金にさらに積み増した金額を支給する。報道によれば退職金に最大3年分の賃金を上乗せするほか、会社側の当初想定だった1000人を大幅に上回る結果となったという。4月から5月中旬までの間で希望者を募集し、7月末から退職が始まっている。

CASE時代へ体制転換

早期退職を募集するのは10年ぶりで、希望者には制度を通じて転職支援も行うとしている。ホンダは「別の分野で活躍を目指す人材を支援する転身支援制度だ」とするが、その背景にあるのが電動化を始めとするCASE技術(他にコネクテッド、自動運転、シェアリング)への対応だ。

同社は2040年に世界の新車をEV・FCV100%にする目標を打ち出し、日本勢の中で初めて脱エンジンを鮮明に打ち出した。日本政府は2020年末に「2050年までのカーボンニュートラル(CN)実現」を国家目標として宣言した。

7月に行った東洋経済のインタビューでホンダの三部敏宏社長が「かつての馬車から自動車に変わるような大きな変化だ。そろそろ電動化をやらないと間に合わない」と危機感を示したように、脱炭素の動きに対応するためにも、従来のガソリンエンジンを中心とした体制の見直しは避けられない。今回の早期退職もそんな流れの1つと言えそうだ。

退職者の所属などは明かしていないが、制度では従来の分野で専門性を磨いてきたベテラン中心の人員構成から、新技術に対応できる若手を主体とした体制へと転換を図る狙いがある。

ホンダはライフシフトプログラムを2022年度以降も続けることを検討しており、制度を通じて人員構成の見直しを進める考えだ。

ホンダは脱エンジンを見据えた布石を着々と打っている。2020年10月、自動車レースの最高峰である「フォーミュラ・ワン(F1)」から2021年シーズを持って撤退することを決断。レースに投入してきた年間数百億円とされる研究開発費や人材といった経営資源を環境技術に振り向けるためだ。

さらに2021年6月には、4輪のエンジンやトランスミッションを製造する栃木県の真岡工場を2025年に閉鎖することも発表。海外での部品の現地調達の拡大や、電動化による駆動系部品の需要低下が主な要因で、工場で働いていた約900人の従業員については国内の別拠点に再配置するという。

CASE技術の研究開発には莫大な費用がかかり、限られた経営資源をどのように割り当てるかは自動車メーカーにとって大きな課題だ。人材構成と事業体制の見直しが、自動車業界で広がっていく可能性がある。

目下の課題は4輪の収益改善

中長期的には電動化を含むCASE対応に注力するホンダだが、足元では4輪事業の収益悪化という課題に直面している。

ホンダは2010年代、拡大路線に突き進んだものの、思うように販売台数が伸びずに収益が大幅に悪化。4輪事業の営業利益率はここ数年1%台に低迷しており、8%台を確保しているトヨタ自動車に大きく溝を開けられている状況だ。

すでにイギリスやトルコ、狭山(埼玉県)の工場閉鎖や、グローバルモデルの派生車種の削減といった合理化策を発表しており、こうした取り組みの効果を取り込みながら4輪事業をどう成長の軌道に乗せていくかが問われることになる。

収益性改善に向けた施策の1つが、今期投入するモデルから採用が本格化する「ホンダアーキテクチャー」と呼ぶ新しい設計手法だ。

セダンや多目的スポーツ車(SUV)といった主力の量産モデルで主要な部品の共通化を図り、コストダウンや設計・開発の工数削減につなげる。マツダが先行し、トヨタも「TNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)」と名付けた設計手法で生産したモデルを投入している。ホンダは後発組ながらようやく乗り出した格好だ。

その設計手法の第1号が、日本と北米で今期投入する改良型「シビック」だ。11代目となる今回のモデルではエンジン周りや電装品関連のモジュール化を実現しており、今後このモジュールを他車種にも展開することで量産効果を生み出す。

ホンダは最終的に、こうした開発工程の改善や余剰になった生産設備の削減を通じて2025年までに研究開発の工数を3割削減し、世界の生産コストを1割削減(いずれも2018年比)する青写真を描く。

三部社長は「聖域なくあらゆる手を打っている」と強調する。電動化という中長期的なテーマに挑みながら、四輪事業改革という目の前の課題をどう解決するか。ホンダの4輪事業の真価が問われている。

東洋経済オンラインより転用


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