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オリックス・T-岡田が寝られないくらい悔しかったこと


オリックス・T-岡田© デイリースポーツ オリックス・T-岡田

バントを失敗したオリックス・T-岡田外野手は両膝に手をついて悔やんだ。そして、がっくりとうなだれて一塁ベンチへと帰って行った。20日・西武戦(京セラドーム大阪)、同点の八回無死一、二塁のことだった。

この試合は山本由伸投手が1失点完投。吉田正尚外野手のサヨナラ犠飛で勝利した。

翌日、T-岡田は「昨日は寝られませんでした」と明かした。今季初のバント機会。これほどまで悔しがる意味は分かっていた。

東京五輪の中断期間中のことだった。一人でマシンを相手にバント練習する姿があった。ホームラン打者によっては、タイミングを合わせるためにバント練習をする選手もいるが、T-岡田はなかなか止めなかった。

ホームラン打者にバントをさせるのはもったいないのでは、というこちらの軽口に真顔でこう答えた。

「2014年は確か5個犠打を決めてます。後半戦はありますよ。絶対に来ますから」

調べてみれば、確かにあった。優勝争いの中でどうやってでも1点を取りに行く場面が来る。その日のために準備をしていた。

すべて分かっていた。準備もしていたのに成功させることができなかった。だから悔しかったし、寝られなかったのだ。

現在、首位を走るオリックスだが、昨季まで2年連続最下位。6年連続Bクラス。優勝争いのしびれる試合を経験している選手は安達了一内野手らごく少数になった。その厳しさを知っているからこそ、プレーで示したかった。

失敗したなら練習すればいい。翌日の試合前にはマシンを相手にバントに取り組んだ。試合が始まれば、先制二塁打など全打点を挙げ勝利へ導いた。

「やっとチームの力になれたかなとホッとしています」

2014年10月2日、ソフトバンク戦にサヨナラ負けで優勝を逃し、悔し涙を流した。プロ野球で負けて涙を流すシーンはそれほど多くない。それほどの激闘だった。あの悔しさは今も心に刻んでいる。

あれから7年、33歳になった。若い選手に向けて「1試合の勝ち負けの重さというか、こういう雰囲気でやっていかないとプロ野球って楽しくない。1試合終わったらへとへとですけど、いい疲労感になる。それをみんなに味わってほしい。緊張感のある試合を楽しんでほしい」と話した。

野手最年長になってもいじられキャラは変わらない。誰からも愛される選手。だからT-岡田が7年ぶり通算7個目の犠打を記録したとき、オリックスベンチは最高の盛り上がりを見せるだろう。それは、優勝へ向けてチームに勢いをもたらせるプレーになるはず。

悔し涙はもういらない。自身初、チームとして1996年以来、25年ぶりの悲願まで、どれだけへとへとになっても駆け抜ける。(デイリースポーツ・達野淳司)

デイリースポーツより転用


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