志村けんさんの愛犬「殿くん」逝く 「長生きを」相葉雅紀が願うも…
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- 2021年8月19日
近年、飼っている犬や猫を亡くし、ペットロスに陥る人が増えている。一方で、ペットが飼い主との死別を経験することもある。新型コロナウイルスによって突然、主人と会えなくなった一匹の犬は、人間以上に深い悲しみを抱えたのかもしれない。お盆の最中、悲しい知らせが届いた。
コロナ禍で迎えた2度目のお盆。東京・東村山市のある住宅には、仏壇に手を合わせたいという人が、ひっきりなしに訪れていた。あわただしく対応するのは、昨年3月に亡くなった志村けんさん(享年70)の兄・知之さんだ。
「今年は手製の盆棚をつくってね。ワクチン接種が済んだからと、去年よりも多くの人が来てくれていますよ」
明るい口調で話す知之さんだが、ある話題に話が及ぶと、途端に声のトーンを落とした。
「つい数日前のことなんだけど、やっさん(志村けんさんの本名は康徳)が飼っていた豆柴の殿くんが、亡くなってしまったんだ……」
16年にわたり『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)の司会を務めた志村さんは、愛犬家として知られていた。これまでに飼った犬は7匹。亡くなるまで共に暮らしていたのが、豆柴の「殿くん」と、ゴールデンレトリバーの「チロくん」だった。
「殿くんと志村さんが出会ったのは、2010年に『天才!志村どうぶつ園』のロケで訪れたブリーダーの施設でのこと。たくさんの子犬がいるなか、目が合った瞬間に運命を感じ、すぐに迎えることを決意したそうです」(テレビ局関係者)
仕事で家を空けることも多かった志村さん。寂しい思いをさせないようにと、自宅にいるときは最大限の愛情を2匹に注ぎ、とりわけ殿くんのことを気にかけた。
「チロくんは独占欲が強く甘え上手なのですが、殿くんはそれを遠くでじっと見ているタイプ。2匹の性格をよく理解していた志村さんは、殿くんだけを寝室に入れたりと、なるべくふたりきりの時間をつくっていたんです」(前出・テレビ局関係者)
収録現場に連れて行くのも決まって殿くんだった。
「番組のロケで訪れた屋内ドッグラン施設では、遊具を一つひとつ殿くんに見せながら『これはこうやって遊ぶんだよ』と教えていました。その姿は、小さな子供と遊ぶお父さんのようでしたね」(前出・テレビ局関係者)
生涯独身を貫き子供もいなかった志村さんにとって、2匹はわが子同然だった。愛犬たちとの穏やかな日常が突然途絶えたのは、昨年の3月20日。新型コロナウイルスに感染した志村さんは呼吸困難に陥り、都内の病院に救急搬送された。懸命な治療が施されたが、自宅に戻ることのないまま29日に帰らぬ人となった。
日本中が深い悲しみに包まれるなか、状況を理解できない殿くんは“なんでパパは帰ってこないの?”と言わんばかりの不安そうな表情を浮かべていたという。
しばらくは定位置だった書斎ではなく、玄関に座り続けた。そこはいつもなら毎晩、「ただいま」という明るい声とともに、志村さんが帰ってくる場所──そこで1週間も待ち続けたが、帰ってくることがないと悟ったのだろう。部屋の中で尻尾を下げたまま、じっと遠くを見つめるようになった。
こんな姿も見られた。新型コロナの陽性が判明した後、志村さんの寝室は感染リスクがあることから閉め切られていた。殿くんにとって、寝室は大好きな主人に甘えられる特別な場所。ドアが開いた一瞬のすきに寝室に入り込んだ。
「ここならパパがいるかもしれない」
と考えたのだろうか。しかし、そこに大好きな志村さんの姿はない。加えてベッドはすでに消毒済み。殿くんは、主人の残り香を探すようにして必死に布団を堀り、その上から動かなかった。
不安と苛立ちからか、殿くんはチロくんとけんかをすることが増え、エサや水も拒否するように。獣医師は、“志村さんの後を追う気なのでは”と心配した。その後、殿くんの新たな住まいとなったのは、志村さんの家政婦の1人である星野初弥さんの自宅だ。
「志村さんは生前、“自分にもしものことがあったら、この2匹を頼む”と、星野さんをはじめ家政婦さんたちに話していたんです。彼女は、家政婦の1人にすぎない自分が引き取っていいものか悩んだそうですが、志村さんの所属事務所や息子さんたちの後押しもあり、引き取ることを決意。チロくんも広島県の星野さんの実家で穏やかに暮らしています」(志村さんの知人)
「血液のがん」が発覚
志村さんが2匹をかわいがるのを間近で見ていた星野さんはめいっぱい愛情を注いだ。
「引き取った当初、殿くんはやせ細っていて、足取りもヨロヨロとしていました。でも、星野さん一家が懸命に声をかけ続け、エサを食べるようになった。尻尾もピンと上がり、砂浜を走り回れるほど、元気を取り戻しました」(前出・テレビ局関係者)
昨年夏、回復した殿くんのもとに真っ先に駆け付けたのは、相葉雅紀(38才)だった。『天才!志村どうぶつ園』に出演し、後継番組の『I LOVE みんなのどうぶつ園』(日本テレビ系)で、MCを務める相葉は、志村さんの“忘れ形見”ともいえる殿くんとの対面を切望していたという。
「対面には、『I LOVE みんなのどうぶつ園』のカメラが密着。警戒心が強い殿くんは、知らない人にかみつくこともあった。しかし、相葉さんといるときは、リラックスした表情を浮かべていた。相葉さんは殿くんの細い体をなでながら、涙をこらえているように見えました」(前出・テレビ局関係者)
相葉は番組で習得したトリミングの技術を生かし、殿くんのシャンプーに挑戦した。
「殿くんはこのときも、嫌がらずにすんなり洗わせてくれた。相葉さんは『(ぼくが)園長の舎弟だって伝わったのかな?』とうれしそうな表情を浮かべていました。『園長が天国で絶対見守っているからね。長生きするんだよ』と声をかけていたのですが……」(前出・テレビ局関係者)
今春、殿くんがかつてのような元気を取り戻したかのように思えた矢先のこと、血液のがんである「悪性リンパ腫」が見つかったのだ。茶屋ヶ坂動物病院の獣医師、佐藤恵一さんはこう解説する。
「飼い主が亡くなってしまうことで、犬が体調を崩すことはよくあります。生活環境の変化や、寂しさからくるストレスが原因だと思われます。私が診たなかでも、飼い主が亡くなって数か月後にがんが見つかった犬がいました。殿くんの場合、志村さんと過ごす時間が、なによりの楽しみだったのでしょう。飼い主への愛情が大きいほど、ストレスが大きくなると考えられます」
見つかったリンパ腫は初期段階のものだった。殿くんは今年で10才。老犬期にさしかかる年齢ではあるが、15才ほどまで生きる豆柴もいる。星野さんは完治を目指し、毎日のように動物病院に通って治療を受けさせた。だが、病気は徐々に進行。飛び跳ねるようにして大好きな散歩に行く日もあったが、体調が優れず一日中寝ていることが一日、また一日と増えていった。
「お盆に入ってからかな、星野さんから“殿くんが亡くなりました”と知らせがありました。殿くんのお骨はあちらで大事にしていただければと思っています」(知之さん)
少し早い殿くんの到着に志村さんは驚くかもしれない。しかし彼はこう言うだろう。
「よくきたね。もうずっと離れることはないよ」
NEWSポストセブンより転用
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