奇跡の復活・竹原慎二YouTubeの成功に見る“ガチンコ”コンテンツ人気
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- 2021年8月14日
元ボクシング世界王者でタレントの竹原慎二のYouTubeチャンネル「竹原テレビ」が好調だ。「竹原テレビ」のチャンネル登録者数は8月6日時点で約40万人。数多ある芸能人YouTuberの成功例と比べて、飛びぬけて多いわけではないが、動画の再生回数は群を抜いており、YouTuberとして成功している。
反響を呼んだ竹原慎二VSシバター
「竹原テレビ」が始動したのは、昨年5月1日のことだった。もともと、2019年12月21日より、ボクシング世界王者仲間の渡嘉敷勝男、畑山隆則と連名のYouTubeチャンネル「渡嘉敷勝男&竹原慎二&畑山隆則 公式チャンネル」で活動していた竹原だったが、3人での活動を並行しつつ、個人チャンネルの立ち上げを決意。
竹原は2014年にステージ4の膀胱がんと診断され、余命1年を宣告されたものの、入院生活を経て奇跡的に生還した過去を持つ。「どうせ1回の命なら楽しくやりたい」「なんでもやります」と一念発起した。このやりとりは、昨年5月1日の初投稿動画で披露されている。
これまでにもっとも再生回数を稼いだのは、昨年6月28日に公開された「竹原をナメきったジムの新人王プロボクサーとガチスパーリング!元チャンピオンVS現役新人王プロボクサー」と題した動画で、1,100万回再生を超えている。
さらに、ここ最近の動画を見てもコンスタントに100万回再生超えを連発。そして最近大きな注目を浴びた動画といえば、7月31日公開の「竹原ブチギレ‼️煽り散らしたシバターをぶちのめす」と題したYouTuber・シバターとの対戦で、これまでに650万回以上も再生されている。動画には、「いままでのシバターの挑戦の中でも一番いい試合だった」「年齢を理由に逃げない竹原さんに感動」「マジで竹原さん強すぎ」などといったコメントが寄せられており、改めて竹原のすごさに気づいた視聴者も多いようだ。
現在、竹原の他にも、多くの格闘家がYouTubeに参戦している。朝倉兄弟や那須川天心、武尊などの現役選手はもちろんのこと、前田日明や魔裟斗、武蔵など現役を引退した格闘家もYouTubeチャンネルを運営している。
たとえば、魔裟斗と武蔵が運営する「魔裟斗&武蔵チャンネル ムサマサ!」では、「ピー連発!西山茉希と酔っ払って旧K-1ギリギリトーク。」「K-1で一番強かったパンチは誰だ? 魔裟斗の沖縄時代の秘話も。」などと題した現役時代にまつわる思い出話や、「『那須川天心vs.3人スペシャルマッチ』について、率直に思うこと。」といった最近の試合の寸評などが定番だ。
その他の元プロ格闘家のYouTuberも、彼らがやる企画といえば、現役時代の思い出話や、最近の試合の寸評や結果予想、同時代を生きた選手との対談などが多い。すでに引退しているのだから、当然の身の振りともいえる。
しかし、竹原はYouTubeへの“ガチ”度を文字通り、身体を使って示している。あえてYouTubeで身体を張り、本気のスパークリング企画をするなど、今も現役で戦っている。そうした真剣勝負の動画こそ「竹原テレビ」で、特に再生回数の良いコンテンツとなっているのだ。
「竹原=ガチ」の根源にある「ガチンコファイトクラブ」
そもそも「竹原=ガチ」という構図が生まれたのには、やはりかつて放送されていた「ガチンコ!」(1999年~2003年、TBS系)の企画「ガチンコファイトクラブ」の影響が大いにあるだろう。「ガチンコファイトクラブ」は、竹原がコーチを務め、喧嘩自慢の不良をプロボクサーに育てるというコンセプト。いきなり不良同士で乱闘を始めたり、喧嘩には自信があるもののもちろん素人である不良たちに対し、竹原が全力でパンチを繰り出して次々とマットに沈めていったりと、つねにヒリヒリする内容だった。
竹原が今も変わらずガチであることは、YouTubeが成功していることと非常に関係している。YouTubeで成功するうえで大切なことの一つに、「YouTubeに本気で取り組んでいるかどうか」がよく挙げられるからだ。
YouTubeの視聴者はとにかく手厳しく、テレビの片手間でYouTubeをやっているようなタレントには容赦ない。 “カジサック”ことキングコングの梶原雄太、オリエンタルラジオの中田敦彦など、成功しているのは捨て身の覚悟でYouTubeに飛び込んだ一部のタレントだけだ。
そういった意味でも、竹原のYouTubeへの“ガチ”さは視聴者から共感を集め、多くの再生回数を記録する一因となっているといえる。竹原と対決したシバターも、8月4日に自身の公式チャンネル「PROWRESTLING SHIBATAR ZZ」に公開した動画で、対決を振り返り「竹原さんガチだった。マジで俺がビビるくらい本気でパンチを振ってきた。あんな気合入ってる50歳いない」と舌を巻いていた。竹原がお約束に則ったぬるいプロレスではなく、やるかやられるかの真っ向勝負を志向していることが良くわかる。
YouTubeに本気で向き合う竹原慎二
なお、このシバターとの対戦には、シバターがYouTubeで竹原を挑発し、竹原が挑発に乗り対戦が決定…という流れがあった。この流れを最初にやった格闘家YouTuberが朝倉未来だ。ここ数か月の竹原の動画は、シバターとの対決動画含め、朝倉をはじめとした有名格闘家YouTuberがかつてヒットさせた動画を参考にしている部分がある。たとえば、毎回様々なヤンチャな一般人とリング上でスパーリングする「竹原!舐められるシリーズ」は、朝倉がYouTuberとしてブレイクしたきっかけになった「街の喧嘩自慢とスパーリング」企画とよく似ているし、7月11日に公開した路上喫煙を注意する動画も、朝倉やその弟の朝倉海などがやっている。
しかしテレビと違ってYouTubeは、ある意味「真似」や「コラボ」がオープンに許されるプラットフォームだ。なぜなら、真似されるほどにその起源となった動画が視聴者の関連動画欄に表示されやすくなり、結果として、オリジナルを編み出したYouTuberが得をするようにできているからだ。
来年1月に50歳を迎える高齢で、かつステージ4のガンを克服して間もないにもかかわらず、竹原が20代の現役格闘家YouTuberの企画を参考し、彼らがやるようなことに身を投じていることは驚異的だし、YouTubeに対して本気で向き合っている証拠だろう。
しかも、竹原の動画には、「ガチンコファイトクラブ」のエッセンスも随所に見られる。そのため、イマドキの格闘家YouTuberのトレンドを真似しても、単なる真似で終わらず、独自の色を出すことに成功しているのだ。「ガチンコ!」のノリはどこか既視感があって、懐かしい。その点も幅広い層から受け入れられ、結果として再生回数が付いてきている理由なのかもしれない。
さらに、YouTubeで成功するために重要だと言われている要素として、「ストーリーがあること」も挙げられる。人はなんらかのドラマを背負った人物に魅了されやすい。たとえば、K-1やPRIDEの煽りVTRを観ずにリング上の戦いを観るのと、VTRを観てそれぞれの生い立ちや因縁を知った上で観戦するのとでは、だいぶ印象が変わるはずだ。
竹原は死の淵から復活した。そして、先述の「竹原!舐められるシリーズ」では、再びグローブをはめてリングに上がり、自分より一回りも二回りも離れた若造と真剣に殴り合いをしている。常人には到底真似できない復活劇ではないか。そこに視聴者は心奪われる。
実際、動画のコメント欄を見てみると、「死の淵から復活しただけでも凄いのに、身につけてきた技術まで復活させてる。竹原さんは最強」「竹原さん、病気から復活して年齢重ねてなおこの強さはかっこいいの一言でしかない」など、称賛の声が多数寄せられている。
以上のことから「竹原テレビ」の動画は、いわゆる“ガチンコ感”が根底にあり、竹原の新しいものを受け入れる柔軟性と、過酷な企画にも耐えうる体力・気力で成り立っているものと思われる。今後も竹原が捨て身の覚悟で挑み続ける限り、同チャンネルの動画はYouTube急上昇ランキングを賑わせ続けるに違いない。
WEBザテレビジョンより転用
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