田中亮明、銅メダル以上確定!フライ級61年ぶり…リオのメダリスト3連破「ほんとに死ぬかと。酸欠で」
- スポーツ
- 2021年8月4日
◆東京五輪 ボクシング 男子フライ級準々決勝(3日、両国国技館)
男子フライ級の準々決勝が行われ、日本男子最後のとりで、田中亮明(27)=中京高教諭=が、2016年リオデジャネイロ五輪ライトフライ級銀メダルのマルティネスリバス(コロンビア)に4―1で競り勝って、5日の準決勝に進出した。リオ五輪の銀、銅に続きメダリストを3連破して4強入り。3位決定戦がないため、銅メダル以上を確定させ、同級では60年ローマ五輪・田辺清の銅以来、61年ぶりの快挙を果たした。
死力を尽くし、精も根も尽き果てた。判定勝ちのアナウンスが告げられると亮明は膝をカクッと折って崩れ落ちた。「正直勝ったか負けたかも分からなかった。叫ぶ力もなかった」と3分3回を完全燃焼。試合直後は、酸欠に陥り医務室に直行した。「ほんとに死ぬかと。酸欠で。心臓が破裂しそうだった」
1回の劣勢を2、3回に巻き返して逆転勝ち。右まぶたをカットしても果敢に前に出た。勝負の3回は相手も死に物狂い。「相手、気持ち強かったっすね。でも僕はもっと気持ち強いんで」。我慢比べで勝ち切り、61年ぶりのメダルをもぎ取った。
5歳から空手、12歳からボクシングを始めた。ハートの強さは「田中一家は命がけや」が口癖の厳しい父、斉(ひとし)さん(54)が幼少期に植え付けた。「亮明は壁を乗り越えるしつこさがあるよ。手首が折れようが、鬼のようにバンバン鍛えたから」
2学年下の弟・恒成(26)は世界最速タイのプロ12戦目で3階級制覇。高校時代は尚弥、拓真の井上兄弟と並びアマの世界で名をとどろかせていた。後に井上兄弟と恒成はプロの世界に身を投じ全員が世界王者に。しかし、亮明だけは「プロは全然興味がない」と“命がけの3分3回”にこだわり続けた。恒成が「世界王者になるより、五輪王者になる方が俺は絶対に難しいと思う」と言い切る険しい道。12年ロンドン五輪後から挑み続け、16年リオは届かなかった東京の五輪舞台で、花が開いた。
コロナ禍の昨年は、恒成を世界王者に育てた父の指導を再び仰いで原点回帰。戻した好戦的スタイルでリオ五輪メダリストを3連破した。試合後、「弟の七光りみたいな感じ」と振り返った月見草の兄が光を浴びた。7日の決勝進出をかけて戦う次戦の相手は、16年リオ五輪金で19年世界王者のゾイロフ(ウズベキスタン)を2回負傷判定で破る番狂わせを演じたパアラム(フィリピン)。「ウソに聞こえるかもしれないけど、正直もう、僕の中でメダルは重要なことではない。どれだけ自分がかっこいい試合ができるか」と亮明。集大成と決めた五輪で燃え尽きる。(小河原 俊哉)
◆亮明のメダリスト3連破 リオ五輪の金、銀、銅の3選手が入った“死の山”で3連破した。26日の初戦で銀のフィノル(ベネズエラ)に5―0の判定で完勝。31日の2回戦は銅の胡建関(中国)に2回負傷判定2―1で競り勝った。準決勝進出をかけて対戦したマルティネスリバス(コロンビア)はリオで1階級下のライトフライ級で銀メダルを獲得。
◆田中 亮明(たなか・りょうめい)1993年10月13日、岐阜・多治見市生まれ。27歳。中京高・社会科教員。5歳から空手、12歳からボクシング。2歳下の弟・恒成はプロ元3階級制覇で高校3年時に国体ボクシング初の兄弟優勝。駒大3年まで国体4連覇。16年リオ五輪プレ大会で金も出場ならず。父・斉さんはコーチ。妻・百美さんと昨年6月に結婚。身長170センチの左ボクサーファイター。
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