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資生堂「高級品もEC販売」へ猪突猛進に相次ぐ酷評 イオン通販で高級ブランド販売を始めたが・・・


イオン通販サイトのトップページでは、「クレ・ド・ポー ボーテ」の販売開始が大きく打ち出されている(画像:イオンの通販サイトより)© 東洋経済オンライン イオン通販サイトのトップページでは、「クレ・ド・ポー ボーテ」の販売開始が大きく打ち出されている(画像:イオンの通販サイトより)

「ブランド価値を毀損する可能性がある今回の施策は、長期的に見ると悪手だ」。化粧品メーカー最大手・資生堂の販売施策が物議を醸している。

普段は同社を高く評価している証券アナリストすら、冒頭のように「悪手」と指摘するのは、イオンのECサイト「イオンスタイルオンライン」で7月から始まった、化粧品ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」の販売だ。同ブランドの商品価格は、美容液が50ミリリットルで税込2万7500円、美容クリームが30グラムで同6万6000円。資生堂きっての高級ブランドだ。

クレ・ド・ポー ボーテの前身である「クレ・ド・ポー」は1982年に発売された。それから現在に至るまで、資生堂はブランド価値の維持に努めてきた。化粧品に特化した小売店である化粧品専門店や百貨店などに販売チャネルを限定。販売時には、美容部員がカウンセリングを通じて商品の特長を直接伝えてきた。

ブランドの価値を損なう?

化粧品専門店オーナーによると、同ブランドの販売には資生堂の設定した接客などに関する資格が必要なほか、毎月の研修参加や売り上げ目標への到達が求められる。「すべての専門店が取り扱えるわけではない」(同オーナー)という。実際、GMSのイオンでもクレ・ド・ポー ボーテを取り扱っているのは、成田や那覇、仙台などの一部店舗にとどまる。

一方、ECサイトであれば、場所や時間を問わず誰でも商品の購入が可能。消費者にとって便利だが、長らく守ってきたブランドの価値を資生堂自ら損ないかねない。

また、目先の収益確保という意味では妙策なのかといえば疑問も残る。「イオンの顧客層とクレ・ド・ポー ボーテの顧客層が合わず、売り上げに貢献するとは考えにくい」(証券アナリスト)からだ。

イオンのサイトで販売されている化粧品で商品単価が1万円を超えるのは、P&Gの「SK-Ⅱ」やコーセーの「インフィニティ」などと数少ない。販売されているブランドの多くは、カネボウ化粧品の「KATE」など単価が数百円から3000円程度の低~中価格帯だ。クレ・ド・ポー ボーテとの顧客層の乖離は否めない。

あまり知られていないが、クレ・ド・ポー ボーテのEC販売は一度頓挫した過去を持つ。資生堂は2019年、クレ・ド・ポー ボーテの公式ECサイトである「オンラインブティック」を開設、消費者へのEC直販を開始した。

しかし、同ブランドのEC直販に化粧品専門店のオーナーらが猛反発、オンラインブティックでの販売は開始から2年足らずの2021年6月末に休止となった。

専門店オーナーが反発した理由は、資生堂の直販により顧客を奪われるとの危機感が大きかったためとみられるが、ブランド価値の毀損に対する懸念もあった。

この販売休止から1カ月も経たずに始まったのが、イオンのECでの販売だ。

資生堂は同時期に百貨店ECなどでも販売を始めたが、ある社員は「イオンなどのGMSはポイント還元で実質的な値引きを行う。クレ・ド・ポー ボーテも値引き販売に巻きこまれてしまうのでは」と懸念する。

このような周囲の声をどう受け止めるのか。東洋経済は資生堂に見解を尋ねたが、締め切りまでに回答はなかった。

EC傾斜の背景に国内事業の停滞も

同社が「悪手」とまで酷評される施策を敢行した理由の1つとして考えられるのが、国内事業の停滞だ。

国内事業はここ数年、インバウンド(訪日外国人)需要の追い風を受けて業績を拡大させていた。その規模は非開示だが、「国内売上高のうち1000億円ほどがインバウンドによるものだったのではないか」と同社のOB社員は推測する。この見方に立てば、国内売上高の2割以上をインバウンドで稼いでいた計算になる。

それだけにコロナが直撃した2020年度の落ち込みは厳しかった。資生堂の2020年12月期の国内売上高は3030億円と、前期比で29.7%も減少。化粧品メーカー2位のコーセーの2021年3月期の国内売上高は同24.8%減と、資生堂より傷が浅かった。

資生堂は2023年12月期に業績を復活させ、営業利益率15%(2020年12月期は1.6%)を目指すとしている。利益率向上のために期待を寄せるのがECだ。

美容部員の接客を介する必要のないECでは、人件費を省ける。クレ・ド・ポー ボーテのような高級ブランドのEC販売を拡大できれば、利益率が飛躍的に向上することは間違いない。複数の資生堂関係者によると、水面下ではイトーヨーカ堂との間でも同ブランドのEC販売の交渉をしているもようだ。

しかし、EC傾斜をなりふり構わず強めれば、ブランドイメージ悪化の懸念や、化粧品専門店との軋轢は深まるばかり。両刃の剣になりかねない。

東洋経済オンラインより転用


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