ミャンマー軍事政権への反発、コロナ拡大でさらに強まる
- 国際
- 2021年7月22日
ミャンマーで新型コロナウイルスの感染者が急増し、2月にクーデターで実権を握った軍事政権への反発がさらに強まっている。20日には収監中の民主派政党幹部が新型コロナに感染して死亡したことが判明。過密な刑務所に収容されている政治犯への感染対策が不十分だとの懸念も出ている。
「息子にひどいコロナの症状が出ていて自宅で2週間近く療養している。救急車で医療施設に運ぼうとしたが病床がないと断られた。政府は何の役にも立たない」。最大都市ヤンゴンに住むドーウィンさん(65)は毎日新聞の取材に、こう嘆いた。ソーピェイさん(31)は「感染した友人に医療用酸素を頼まれたが入手できず、友人は治療を受けられないまま、自宅で一人きりで亡くなった。とても悲しい」と肩を落とした。
ミャンマーでは6月以降、感染が急拡大。軍事政権は17日から25日までの予定でロックダウン(都市封鎖)を実施しているが、1日あたりの感染者数は5000~6000人台で推移する。死者数は連日、過去最多を更新し、20日には286人に達した。地元メディアは、実際の死者がはるかに多い可能性を報じている。オンラインメディア「イラワジ」は、ヤンゴンの火葬場に遺体が次々と運び込まれ、火葬が追いついていないとの慈善団体の声を伝えた。
ワクチン接種も遅れている。20日付の国営紙によると、接種を終えた人は人口の3%に満たない。酸素工場の前では自宅療養を余儀なくされる患者の家族らが医療用酸素を求めて早朝から行列を作っている。
一方、アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)の幹部、ニャンウィン氏(78)が20日までに新型コロナで死亡した。2月のクーデターで拘束され、政治犯を多く収容するヤンゴンのインセイン刑務所で感染が判明。病院に移送されていた。
同刑務所は過密状態で、新型コロナの感染が広がっているとみられる。同刑務所に収容されているスーチー氏の経済顧問、ターネル氏の妻は18日、フェイスブックに「夫は数週間にわたり風邪やインフルエンザの症状があり、とてつもないリスクがある」と投稿し、即時の解放を求めた。
21日付の国営紙によると、これまでに全国の刑務所に収容されている375人がコロナに感染し、ニャンウィン氏以前に6人が死亡した。【バンコク高木香奈】
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