トマト栽培、プロが5Gで遠隔指導 NTT東と都が実験
- 政治・経済
- 2021年6月29日
高速通信規格「5G」を活用した農業支援の実証実験をNTT東日本と東京都が進めている。複数のカメラで撮影した現地の映像をリアルタイムで共有することで、遠隔地から農業のプロの指導を受けられるようにする。大玉トマトのハウス栽培で行った実験では、農業の未経験者でも高品質のトマトができたという。
実証実験では、地域を限定して高速ネットワークを使えるようにする「ローカル5G」という仕組みを活用。東京都調布市のNTTの研修施設内にハウスを設け、走行型カメラや作業者が身につけるカメラで栽培中のトマトの様子を撮影し、高解像度の映像を約20キロ離れた立川市の都農林総合研究センターに送る。5Gによって大容量の映像データをスムーズに送れるため、農業技術に詳しいセンターの専門家が映像をもとに作業者に病気の予防や手入れ、収穫のタイミングなどを助言できるという。昨年末から始めた実験では、農業経験のない作業者が約500平方メートルのハウスで350株を栽培し、市場に出しても通用する高品質のトマトが収穫できた。
実証実験の費用の一部は東京都も負担した。都によると、経営規模が小さい農家が多い一方で新たに農業を始めたいという人もおり、収益力を高めるために指導員が効率よく回れる仕組みが求められていた。実用化にはコスト面の課題もあるが、遠隔地から指導できれば、移動時間が大幅に節約できるだけに、センターの村上ゆり子所長は「小規模で分散した農地の多い東京の農業に新しい可能性が広がる」と期待する。
一方、NTT東日本は農業支援のノウハウを東京都以外の中山間地域などでも活用し、5Gの普及にもつなげたい考えだ。加藤成晴執行役員は「担い手不足から来る農業の課題解決の一翼を担いたい」と話す。(山本知弘)
コメントする