東芝、株主総会で波乱の様相 異例な役員人事差し替えの舞台裏
- 政治・経済
- 2021年6月14日
東芝は今月25日に開く定時株主総会を前に、経営の混迷が深まっている。10日公表された外部弁護士による調査報告書で、昨年7月の総会運営が「公正でなかった」などと指摘されたことを受け、社外取締役や大株主が会社側の提案する役員選任案に相次いで異議を表明。東芝は13日に開いた臨時取締役会で、取締役候補2人と執行役候補2人を選任案から外した。いったん公表した役員人事を総会直前に差し替えるのは異例で、総会での波乱が予想される。
◇報告書を機に対立表面化
東芝の役員選任案は5月14日に公表された。取締役として、綱川智社長と畠沢守副社長のほか、永山治・取締役会議長(中外製薬名誉会長)ら社外人材11人を選任する内容だ。
この取締役選任案に対し、再任候補となっているジェリー・ブラック、ポール・ブロフ、レイモンド・ゼイジ、ワイズマン広田綾子の4氏が連名で、「全員は支持しない」との意見を表明した。4氏は誰の選任に反対なのかは明示しなかったが、公表済みの会社側提案に対して取締役の中から不支持が示される異例の事態となった。
4氏による異議申し立てのきっかけは、外部の弁護士らが10日に公表した報告書だ。大株主で「物言う株主」のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントの申し立てを受けて調査を行った結果、東芝と経済産業省が一体となり、エフィッシモや米ハーバード大学基金運用ファンド(HMC)など一部の株主に不当な圧力をかけたと認定した。
ここで問題となったのが、東芝の監査委員会(太田順司委員長)が同様の申し立てを受けて1〜2月に実施した調査では「不当な関与を認めるべき情報はなかった」と結論付けていたことだ。さらに10日公表された報告書は、監査委員会による調査結果のとりまとめの際、ブラック氏が太田氏に対して「経産省と通常以上のコミュニケーションと情報要求があったと記載すべきだ」と要求していたことを明らかにした。ワイズマン氏ら複数の社外取締役が、太田氏に「HMCへの直接の問い合わせをしっかり行うべきだ」「経産省との極めて密接なやりとりに驚いた」などと伝えていたことも明らかになった。
関係者によると、今回4氏は声明で、監査委の調査について「透明性がなく、提供された情報は非常に誤解を招くような形で提示された」と主張しているという。異議申し立ての背景には、この調査を主導した太田氏らが取締役として再任されることへの反発があったものとみられる。
◇相次ぐ「不信任」
東芝の役員選任案に対しては、外部からの異議も相次いでいた。米議決権行使助言会社グラス・ルイスとインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は12日までに、取締役候補13人のうち、太田氏と、ともに監査委員を務める小林伸行氏、山内卓氏のほか、指名委員長も兼務する永山氏、指名委員のワイズマン氏の計5人について反対を推奨した。
両社とも、報告書が指摘した監査委の対応を問題視している。会社提案では、太田氏は25日の総会後に監査委から外れるが、取締役には残る内容になっていた。また、こうした役員選任案を取りまとめた責任を問い、指名委メンバーも反対推奨の対象に含めた。
さらに、永山、太田、小林、山内の4氏に対し、東芝の2位株主の資産運用会社3Dインベストメント・パートナーズが即時辞任を要求したことが13日明らかになった。報告書を受け、株主の利益に反する行為を行ったと判断した模様だ。
こうした中で、東芝は13日、太田、山内両氏を社外取締役候補から外すとともに、報告書の中で経産省との交渉役として名指しされた副社長と上席常務の執行役2人を役員候補から外すことを決めた。内外からの批判が強い4人を役員候補から外すことで、株主総会を乗り切りたい考えとみられる。ただし、永山氏と小林氏は引き続き取締役候補として残っており、大株主がどう判断するかが注目される。【井川諒太郎、杉山雄飛】
毎日新聞より転用
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