人権リスク高い案件、期限内に全供給網を調査 三井物産
- 政治・経済
- 2021年6月10日
三井物産は、本社と海外法人、連結子会社の計281社の全てのサプライチェーン(供給網)を対象に、2022年度末までに強制労働など人権侵害のリスクが高い案件を洗い出す方針を明らかにした。全世界で事業展開する総合商社が、商流の川上から川下まで全てを対象に、期限を明示して点検するのは異例だ。
国連などは企業に「責任ある調達」の一環として、商品やサービスの供給網に強制労働などの人権侵害リスクがないかを調べる「人権デューデリジェンス(調査)」を求めている。
三井物産は19年度から始めた人権デューデリで、国際的な指標に照らして、食料・衣服・建材・鉱物など人権侵害リスクの高い分野と地域を特定。20年度は本社の取引先を中心に調べ、一部は外部専門家と訪問調査した。新興国での労働管理の改善など、取引先に是正を申し入れたケースもあった。
その調査対象を、今後は海外現地法人と連結子会社の取引先にも広げる。調べるのは、強制労働や児童労働▽差別▽ハラスメント▽結社の自由と団体交渉権――などの有無。労働時間や賃金を適切に管理しているかや、地域住民への影響も調べる。
調査結果の一般への開示範囲も広げて、是正の申し入れ内容も分かるようにする方針だ。担当者は「社会的な要請が高まり、説明責任を果たす必要がある。小規模な取引先にも働きかけて、人権侵害につながる商慣習を見直す契機にしてもらう」としている。
ミャンマーでのクーデターや、中国・新疆ウイグル自治区で強制労働が取り沙汰されていることを踏まえ、国際的に企業の人権対応への関心が高まっている。三井物産は、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する取り組みの一環として、対応を強化する。(橋田正城)
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