家族の付き添いに有給休暇・会場への交通費支給…ワクチン接種、企業が支援強化
- 政治・経済
- 2021年6月9日
新型コロナウイルスワクチンの接種を加速させるため、企業が従業員や地域住民への支援に乗り出している。就業時間中の接種や家族への付き添いを認めるほか、接種予約の手伝い、自社が運営する病院での接種などを進める。迅速な接種が、景気回復にもつながるとみている。
■交通費支給
「80歳代の両親は元気だが高齢で疲れやすいし、不測の事態があるのではないかと思って付き添った」
ヤフーで働く女性(47)は5月、休暇を取り、神奈川県内の商業施設でワクチンを接種する両親に付き添った。ヤフーは社員が就業時間中に接種することを認めるだけでなく、家族に付き添った場合などに特別な有給休暇を取れるようにした。
担当者は「社員と家族の健康が第一。安心して接種できる環境を整え、社員の重症化やクラスターの発生を防ぎたい」と説明する。
アサヒグループホールディングス(HD)は、同居家族の接種に付き添う場合、会場までの移動も合わせて就業時間とみなす。ソフトバンクは契約社員やアルバイトなどを含む約2万5000人に就業時間中の接種を認め、交通費も支給する。
■会場を提供
ワクチン接種の予約を支援する動きもある。
ローソンは介護相談窓口を備えた店舗で、スマートフォンなどの操作が分からない高齢者に対し、ボランティアや介護事業者などが説明する場を設けた。携帯電話販売のコネクシオも、200か所以上の店舗で接種予約を支援する。
チケット販売のぴあは、本業のノウハウを生かし、予約システムを自治体に提供する。ワクチン接種券を受け取った対象者の希望日や時間帯、会場が重なった時に、自動で抽選する仕組みだ。予約受け付けの際、同時に数十万件規模のアクセスに耐えられるシステムを活用する。
接種会場として、自社の設備を提供する動きも相次ぐ。イオンは自治体の要請に応じ、ショッピングセンターの施設などを提供している。三菱自動車は、愛知県内の工場にある体育館を会場として自治体に提供する予定だ。第一生命保険も、全国に約90か所ある拠点の活用を検討している。
■運営病院活用
企業が設置・運営する「企業立病院」の活用も進む。
富士通が運営する「富士通クリニック」(川崎市)は7日、住民向けのワクチン接種を始めた。地元医師会の要請に応じ、週1~2回、院内のホールで医師が対応する。石井俊哉院長は「通常の診療や健康診断との両立は難しいが、できる限り対応したい」と話す。
日立製作所や日本郵政、いすゞ自動車の企業立病院でも、住民向けのワクチン接種を行う。企業立病院は社員や家族の治療、健康診断と地元住民の一般診察を並行して行っているケースも多い。職場での集団接種が始まれば、社員向けの接種との調整も必要となりそうだ。
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