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酒井法子YouTube密着ルポ「私は基本、ポンコツで昭和のノリ。21万回再生は『馬場うれピー』」


撮影に臨む酒井法子(撮影・上田耕司)© AERA dot. 提供 撮影に臨む酒井法子(撮影・上田耕司)

5月1日に自身初のYouTubeチャンネル「1億のスマイル!!」を開設し、21万回の再生回数を記録したのりピーこと、酒井法子。次作のYouTubeロケを密着取材し、その意気込みを独占インタビューした。

 

ロケが行なわれたのは5月4日。埼玉県飯能市の大自然に囲まれた場所で行なわれた。杉や檜が生い茂る山間地帯で、晴れていたので、木々の葉の緑がまぶしい。鳥のさえずりが聞こえる山々の谷間の一軒家に、酒井がやってきたのは午後1時半頃。

車から降りた酒井は、日差しが強いために日傘を差し、動きやすいランニングシューズを履いていた。撮影前、手や足にスプレーをかけていたので、何ですかと尋ねると、「虫よけ」と言ってニコっと笑い、撮影に向かって行った。そんな会話からロケ取材がスタートした。

初回の配信では再生回数は初日で13万回、4日目で21万回を超える人気ぶり。撮影の合間に、本人に感想をたずねると、

「メチャクチャうれしいですよ。東京ドームで3~4回コンサートをしたくらい、たくさんの人が見て下さったのではないでしょうか。私自身、夜中の0時に自分のYouTubeがアップされるのをすごい楽しみにしていたんですが、(チャンネル名の)『1億のスマイル』で検索したら、昔の動画ばっかり出てきてなかなか見つけられませんでした」

酒井は自分のことを、「基本的にポンコツなんで、ホントにおっちょこちょいなので」と謙虚に表現した。現在、長男(21)と2人暮らし。

「長男は専門学校を卒業し、もう社会人です。YouTubeがとても好きで、うちにいる時は四六時中見てますね。私の初回の動画を見て、『シンプルな塩おにぎりでもおいしいというくだりから、モツ鍋がおいしいという映像に変わって行くところが笑った』とか感想を言っていました。『あーでも、めっチャ、カッコ良かったよ。がんばれ』ってほめてくれました」

長男はYouTubeに詳しいが、酒井本人はあまり見ていないらしい。はじめしゃちょー、ヒカル、東海オンエア、ゆきりぬ、てんちむ…など有名YouTuberの名前を次々に上げてみたが、ほとんど見たことがないという。

「まだまだ勉強不足ですね。もっと勉強しなくちゃな、と思います。筋トレ動画は見ています。安井友梨さんとか」

1986年に所属事務所サンミュージックからアイドルデビュー。愛くるしいルックスで、自ら「のりピー」と名乗り、「うれピー」(うれしい)、「はずかピー」(恥ずかしい)、「くやピー」(くやしい)などのピー語が一世風靡したこともあった。

初回のYouTubeが良かったので、今の心境をピー語で表すとどうなりますかと聞くと、10秒くらいの間があり、返答があった。

「『おもしろピー』でも『マンモスうれピー』でも『お疲れピー』でもないですね……」

さらに10秒の間。

「メッチャうれしい時、使うんですが、マニアック過ぎて全然、浸透しなかったんですけど、ジャイアント馬場さんからとった『馬場うれピー』」

それを聞いた周囲のスタッフは思わず吹き出した。プロレスラーの故・ジャイアント馬場の靴のサイズは破格に大きく、必殺技の「16文(38.4センチ)キック」で知られた。昭和の時代を駆け抜けたプロレス界のヒーローだった。

「私は昭和のノリなので(笑)」(酒井)

ロケ地では気配りの人だった。記者が口ごもると、「私、高ぶってますか?」とすぐにフォロー。喉が乾いたと思うと、ノリピーからペットボトルの水を手渡された。スタッフたちは「酒井さんの人柄に惹かれて付いていってる」と言った。

09年にサンミュージックを離れ、12年から他の事務所に所属した。ロケが終わり、YouTubeプロデューサーを交えて車の中でのインタビューとなった。

──2012年から8年間所属した事務所を4月末で退社し、5月1日に個人事務所「株式会社スマイル」を立ち上げましたが、前事務所からは引き止められたのでは?

「引き止められました。8年間、お世話になって、社長と一緒に歩いてきたので、えーっという寂しい気持ちと、なぜ、という気持ちもおありになったでしょうし…。私は事務所では古株で、ホームページでも良い位置でバーンと出てきますからね。だけど、新型コロナウィルスの影響のためにイベントとかコンサートも開こうと思っていたけれども、できなかったし、そういった中で残念なこともありました」

今年2月で50歳になって、「下っ腹にドーンって歳を感じちゃうなー」と笑ってみせた。

「40代まではそこまでは考えませんでした。のりぴーフォーティエイト(48)とか言って、ディナーショーで踊って歌ってましたから(笑)。さすがに50の声を聞くと、あと何年仕事ができるのかなと思うようになりました。このまんま終わっていくのも幸せなんだろうけれども、あとひと踏ん張り。所属事務所を離れて一人で1度やってみたかった。円満退社なんです。機会があれば、一緒にお仕事をさせて頂くこともあるだろうと思います」

──5月末にはこれまでのファンクラブも解散すると発表されました。YouTubeを見たのは、昔からのファンも多いのでは?

「そう思います。私以上に私を知ってくれているような、ありがたいファンの方ばかりです。私のことを4コマ漫画にしたり、イベントで私の若い頃の写真を”遺影”のように持って来てくださる方もいるんですよ(笑)。ファンの方がいらっしゃらなければ何をやったっても意味がないわけで、ファンの方がいて下さって初めて私がいられる。ずっと応援して下さるファンのことを最優先に考えていきたいです。始まりがあれば終わりもある。閉じてしまうものはあると思うんですけれど、これからの新たな挑戦を温かく見守っていただければと思います。中国のファンサイト『weblo』はそのまま残します。新しいファンクラブも考えています」

──現在は株式会社スマイルの社長?

「ははは、いやいやいや、私一人しかいない会社ですから。一人ぼっちの出発です」

──長男と2人暮らしだそうですが、遊んだりしますか。お母様とは一緒に住んでいないんですか。

「長男が大人になっても、一緒に温泉とかも行くし、意外と一緒に行動してくれますね。母は別のところに住んでいます」

──初回のYouTube動画はクオリティの高い映像が印象的でした。

「テレビと変わらないねって、あちこちで感想を頂きました。こんなYouTube見たことないとも(笑)。スマホで自撮りするのかなーて思ったら、そうじゃないんですもの。ベテランのスタッフの皆さんに支えてもらえて心強いです。ここまで来ちゃうと、もう後ろを振り返らずに前だけ向いて突き進むしかないですねー」

──更新の頻度ですが、これから毎日というふうになって行くんでしょうか。

「毎日というのはさすがに厳しいかと思います。週1でもけっこう大変で。15分間の1本の動画に10時間以上の撮影3日間ってものもありました(笑)」

──ロケ地にいる人を数えたら、酒井さん以外に10人いました。こんなに大勢で撮影しては赤字では? 再生回数に応じたギャラはちゃんと入って来るんですか?

「そうですね、今は考えてません。のちのち結果が付いてくればと思っています」

──YouTuberは企業からの広告案件での収入の割合が高いものですが、広告案件は?

「企業案件は今回、受けない形でやらせていただいてます。“先に与える”をテーマにして“先にお金ありき”は止めようと。良いものをこだわって追求すれば見て下さってる方の心に刺さると信じています」

現場を指揮するプロデューサーが酒井のギャラについてこう話し始めた。

「酒井さんのギャラは事務所のスマイルに直接振り込まれるようになっていますので中間搾取はありません」

企業案件をやらないという点に関しては、こう説明した。

「1回目の動画でも冒頭で、ご本人が話していましたが、得る喜びもあれば与える喜びもあるのではないでしょうか。こんな世の中だからこそ、誰かを笑顔にしたいとそれだけを掲げて活動を続けて、みんなで助け合えばどんな世の中も誰も困らないはずというのを体現したいです。エンターテイメントの持つ力は間違いなく誰かを笑顔にするための力ですからね」

この日のロケでは、20年、30年とテレビ局で撮影現場を引っ張ってきたベテランもいた。

「あえて、YouTube寄りのスタイルで制作しないのも面白いかなと考えています。iPhone一つで自撮りしたYouTuber達が一時代を築きましたが、逆にオワコンやオールドメディアと言われる平成を支えてきた映像職人とも言うべきクリエイターが新たな土俵で本気で戦ったらどうなるのか。その辺りも楽しんでいただけたらと思います。画面の裏側には実は大勢のスタッフが手間ひまかけてる。そんなベテラン職人の息吹を画面越しに感じていただけるよう、挑戦していくつもりです」(同)

初回動画ではドローンを飛ばす映像があったが,二作品目でも、ドローンを飛ばし、その下を酒井が走る雄大なシーンがある。そして、酒井が手にする本の中表紙には「絶望の日まで 希望のタネを蒔く」と、対談相手のメッセージが書かれていた。

AERA dot. より転用


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