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菅首相「年末年始は感染者減少」と致命的な読み違えも 無策が招いた感染拡大


感染抑制より経済対策を重視してきた菅首相がついに緊急事態宣言に踏み切った。判断が遅れた背景にあるのは、高支持率をテコに政権を維持する政治姿勢だ。AERA 2021年1月18日号の記事を紹介する。

*  *  *
まだ大勢の記者が挙手をしていたにもかかわらず、わずか30分で打ち切られた1月4日、年始恒例の首相記者会見。菅義偉首相の表情は冴えず、会見終了後は逃げるようにして足早に会場を後にした。

菅首相はこの会見で初めて緊急事態宣言の発出を検討すると表明した。前年12月25日の記者会見では宣言に否定的な態度をとり、1月1日に発表された年頭所感では、その言葉にさえ触れていなかった。なぜ4日になって態度を一転させたのか。

その要因が「新規感染者数の増大」であることは明らかだ。驚くことに、当初、官邸の読みは「年末年始、新規感染者数は減少する」と真逆だった。1月4日夜、民放テレビの生放送に出演した菅首相は「年末年始において陽性者数が少なくなるだろうと考えていた」と発言している。菅政権の対応の遅さには身内の自民党からも厳しい声があがっている。

「そんな悠長なことを言っている場合ではない。国家の危機を前に陣頭指揮を執るリーダーとして、現状把握能力に欠けた致命的な発言だ。この発言が本心だったとすれば、政権の危機管理は相当危ういのではないか」(自民党関係者)

■無策が招いた感染拡大

発言の根拠は不明だが、考えられるのは昨年11月25日、西村康稔経済再生担当大臣を先頭に「勝負の3週間」と銘打って講じた緊急対策だ。この時の目玉が「飲食店に対する営業時間の時短要請」だった。

大見得を切ったものの、その後も新規感染者数は増大。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は「個人努力に頼るステージは過ぎた」(11月27日)、「人々の動きと接触を短期間で集中的に減らすことが、感染の沈静化には必須」(12月6日)と警鐘を鳴らし続けたが、菅首相は肝いりの「GoToトラベル」を頑なに継続し、結局、全国一斉停止に踏み切ったのは12月14日だった。

感染抑制策の結果は、約2週間後の新規感染者数に反映される。「勝負の3週間」で結果が出ないのであれば、その時点で具体的で実効性のある次のプランを提示するべきだった。立憲民主党の福山哲郎幹事長は、この間の菅政権の「無策」が感染拡大を招いたと憤る。

「野党は12月2日に新型コロナウイルス対応の特別措置法改正案を提出し国会の延長を求めましたが、菅政権は一顧だにせず国会を閉じました。もし延長国会で緊急事態宣言に伴う補償の議論がされていれば、その後の第3次補正予算に補償の財源を組み込むことができた。補償の財源も想定されていない今の曖昧な状態では、営業制限を強いられる飲食店サイドも、納得して受け入れることができない。全ての判断が遅く、後手だとしか言いようがありません」

菅首相に近い自民党議員の一人は、首相はそもそも経済優先がモットーで、経済に負荷のブレーキをかける政策には二の足を踏む慎重派と話す。しかし、ここまでコロナ対策が後手に回る原因は、もしかすると他にあるのではないかとこういぶかる。

「前政権の途中から、コロナ対策は西村大臣が中心で、菅さんは蚊帳の外だった。首相になっても、何でも自分で判断すると公言している故に、もしかすると官僚や専門家があげてくる複雑なデータや数値、感染症医療の知識、これまでの政策の連続性などをのみこめていないか、菅さんの元に正しい情報があがっていないのかもしれない」

別の政府関係者は、菅首相が気にしているのはコロナ感染者数ではなく政権支持率ではないかと推測する。

「安倍政権であれだけのスキャンダルがあっても退陣に追い込まれなかった要因は、政権支持率が一定程度維持できたこと。総理自身、自分も官房長官としてそれに貢献したと周囲に吹聴しています。だからこそケータイの値下げやデジタル庁の新設など支持率には決してマイナスにならない目先の政策にこだわる。半面、『自分が悪役になってでも日本の危機を救おう、出来ないときは潔く辞任しよう』という発想はそもそもないのではないか」

※【小池都知事、緊急事態宣言要請で責任転嫁? 「犬猿の仲」菅首相と責任のなすり合い】へ続く

(編集部・中原一歩)

※AERA 2021年1月18日号抜粋

AERAより転用

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