2013年1月に演説するフェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)。米連邦・州の規制当局は、FBが12年に「インスタグラム」を、14年には「ワッツアップ」を矢継ぎ早に買収したことを問題視し、9日、反トラスト提訴に踏み切った=AP米連邦・州の規制当局は、FBが12年に「インスタグラム」を、14年には「ワッツアップ」を矢継ぎ早に買収した… 米連邦取引委員会(FTC)と計48の州・特別区などの司法当局は9日、反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで米フェイスブック(FB)をワシントンの連邦地裁に提訴した。FBが2012年に写真投稿アプリ「インスタグラム」、14年にメッセージアプリ「ワッツアップ」を買収したことについて、ライバル企業を取り込んで競争を阻む行為だと断定し、これら二つの事業の分離も視野に入れた是正措置を求めた。

米司法省が10月にグーグルを反トラスト法違反で提訴したのに続き、当局側が巨大ITへの規制強化を狙う大きな節目となる。

記者会見したニューヨーク州のジェームズ司法長官は、FBが将来性のある企業に目を付け、「買うか葬るか(buy or bury)」という戦略で臨んできたと指摘。「ソーシャル・ネットワーキング市場で独占的な地位を築き、広告を通じて巨額の富を得てきた」と批判した。

FBのようなSNSでは、利用者が増えれば増えるほど利便性が高まり、ほかのサービスに乗り換えづらくなる効果が働く。10月に公表された米下院の報告書によると、FBのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は2012年8月に買収したインスタグラムについて、その半年前に社内で「大きく成長すれば我々にとって障害になる」と指摘していた。今回の提訴では、潜在的なライバルを買収する手法に加え、アプリ開発業者がFBの機能を共有したサービスを提供するのに制限をかけてきたことについても、「反競争的」だと訴えている。

FBなどの巨大IT企業は顧客のデータを元にオンライン広告で巨富を稼ぎ、国家をしのぐほどの影響力を持つに至った。これに対し、各国当局による規制強化の動きも強まっている。米司法省によるグーグルに対する提訴では、検索サービスでの独占を問題にしつつ、事業分割については可能性をほのめかす訴えにとどまっていた。今回のFBへの提訴では、より直接的な形で分割を求めている。

IT大手は金融緩和で調達しやすくなった巨額の資金を生かし、有望なベンチャー企業の買収を重ねて成長してきたが、こうした従来の姿勢にも歯止めがかかる可能性がある。(ワシントン=青山直篤)

朝日新聞社より転用