「エリアカ」改革が選手強化につながった 日本卓球協会強化本部長・宮崎義仁氏
- スポーツ
- 2020年12月9日
剣豪・宮本武蔵の兵法書「五輪書」にちなんで、五輪競技の指導者のモットーを月イチで紹介する。第46回は、日本卓球協会・宮崎義仁強化本部長(61)の「改革の極意」に迫った。
卓球界の強化のトップ、宮崎さんは敏腕ビジネスマンのようだ。将来有望な子どもを育成するJOCの「エリートアカデミー」の改革は、成果の一つ。12年の総監督就任後、国の助成金を次々と獲得した。そのお金で世界最強の中国から練習相手を呼び、自己負担だった選手の海外遠征費をまかなった。
変革は、モノやカネだけではない。コーチ陣に、「エリアカ」のダメ出しをさせた。河野太郎行革相の「縦割り110番」よろしく、問題点をあぶり出し、強化策をつくった。
「半年で全て解決したら選手が変わった。強くなる条件を満たしたのだから、それは強くなるしかないよね」
練習相手も遠征費も「声」に応えたもの。少数精鋭にも切り替えた。強制だった早朝ランニングを廃止。自発的に取り組む環境作りと、意識改革をした。消滅危機だった卓球の「エリアカ」を立て直し、後に入った張本智和、平野美宇が東京五輪代表になった。
そもそも、審査が厳しい国の助成金は簡単に得られない。他競技がうらやむ成果を、どう実現させたのか。
「プレゼンの資料は自分で作りましたよ。強化担当が自分で作る団体はないんじゃないかな。自分で作るから質問にも答えられる」
昔から人任せにしない性分だ。長崎・鎮西学院高では同学年は自分だけ。恵まれない環境ながら2年で九州王者になった。近大では1日12時間の猛練習。和歌山銀行時代、休日返上で編み出したサーブが国内外を席巻した。85年世界選手権シングルス5位、88年ソウル五輪出場。引退後、総務部門の複数の課のかじ取りを任された。自ら切り開いて来た人だから、どうすれば人が育つかも心得ている。
「練習時間で強さは決まらない。やる気で決まる。指導者は仕組みを作って、選手が勝手に強くなったと思わせることが大事」
アテネ、北京、ロンドン五輪で男子代表監督を務める傍ら、今につながる小学生からの代表強化システムを構築した。低迷した日本卓球界を復活させた立役者は、16年から現職に就く。まいた種が実を結ぶのは、来年だ。
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