女川再稼働へ、避難道路整備は進むか 問われる真価
- 政治・経済
- 2020年11月15日
東北電力女川原発2号機の再稼働をめぐり、宮城県の村井嘉浩知事と須田善明・女川町長、亀山紘・石巻市長が会談した11日。終了後に再稼働への同意を表明した知事が、地元が求める道路整備について「ある程度、(県が)財政出動しても県議会や県民の理解を得られると思う」と発言すると、隣にいた須田町長は「そこまで踏み込んでくれるのか」と驚いた。県の予算とはいえ、優先的な配分に言及するのは厳しいだろう、とみていたからだ。
今回の再稼働容認への動きを加速させたのは、女川町議会だった。知事に速やかな再稼働の実現を求める意見書をまとめ、佐藤良一議長が遠藤信哉副知事に手渡したのは9月16日だ。
震災前に1万人いた町の人口は4割近く減り、600以上あった事業所もほぼ半減した。公共工事の事業費などで試算された建設業総生産額は復興工事を受け、震災前の10倍にも膨らんだが、工事が終われば逆戻りする。
9月7日の町議会本会議で「女川原発の存在がなければ、町民の経済活動の破綻(はたん)は火を見るより明らか」と訴えたベテラン議員のもとには、知事から「お気持ちをしっかり受け止めて私も頑張ります」とメールが届いた。知事は、同意表明の際には再稼働の必要性をこう説明した。「立地自治体は運転開始に伴い、設備投資による固定資産税や核燃料税の収入増も期待され、地域経済の発展にも大きく寄与する」
だが、町議会が再稼働とともに知事に求めた避難道路については、どうか。
知事は予算配分を優先させたい意向を示しつつも、地元が要望する国道398号石巻バイパスへの具体的な取り組みには踏み込まなかった。200億円もの事業費が必要で、県の予算だけでは賄えない。避難計画を担当する小泉進次郎原子力防災担当相に10月に直談判もしたが、進展はなかった。佐藤議長は「知事には、道路の着手に向けた言質を国から取ってもらいたかった。再稼働まで2年以上あるので、その間に何とか進めて欲しい」と話す。
女川原発の避難計画については、仙台高裁も10月、再稼働同意の差し止めを棄却した際、「現状ではなお相当の課題が残されている」と指摘した。女川原発だけではない。同じように半島にあり、2016年に再稼働した四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)も、高松高裁が「避難計画は改善が必要。対策の先送りは許されない」(18年の運転差止仮処分の即時抗告審)と言及した。
一方で、地元の要望を受け、避難道路の整備が進んでいる原発もある。日本原電敦賀原発(福井県敦賀市)がある敦賀半島に今年3月、約4キロの県道トンネルが完成した。事業費は約130億円で、国の原子力発電施設等立地地域特別交付金が充てられた。市の担当者は「豪雨時には土砂崩れが起き、避難の不安があった。ただ、山越えの道はまだまだある」と話す。
15年に再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)では、今年10月から原発に隣接する県道の迂回(うかい)路の建設が22年度完成予定で始まった。全長約3キロで、九州電力から建設の申し出があった。原発から、より離れて避難できるようにするのが目的だ。
村井知事は11日、道路整備について、こうも発言した。「女川町長には『全力で継続的かつ着実にやる』と回答したが、それが私の強い思い。言った以上は前に進める」
再稼働への同意を伝えるため、知事は18日にも梶山弘志・経済産業相のもとを訪れる。発言の真価が問われる、まず最初の場となる。(岡本進、志村英司)
朝日新聞より転用
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