学給に和牛続々登場 需要新たに3000トン コロナ対策の農水省事業活用
全国各地の小・中学校の給食に和牛が相次いで登場している。新型コロナウイルスの影響で冷え込む消費を喚起しようと、農水省の学校給食提供推進事業を活用した取り組み。同省によると、活用される牛肉は最大3000トンに上る見通しだ。数億円規模の需要が生まれた産地や、年間生産量の1割に上る販路を確保した産地など、各地で一定の成果を上げる。ただ、依然として在庫が積み上がり、継続的な対策が欠かせない。(北坂公紀)
同事業は、新型コロナウイルス対策として4月に成立した2020年度第1次補正予算で財源を確保した。学校再開に合わせて、5月から順次、提供が始まった。 兵庫県では10月から、最高級ブランド和牛「神戸ビーフ」が小・中学校の給食に登場した。サイコロステーキや焼き肉、牛丼などメニューはさまざまで、来年3月にかけて県内1086校で約60トンが提供される。「神戸ビーフ」の年間生産量(約1500トン)の4%に当たり、取引額は加工費なども含めて6億円に達するという。 牛肉を手配する兵庫県食肉事業協同組合連合会は「ロースやヒレなど、ステーキ向けの高級部位も提供する。両部位は外食需要の低迷で特に影響を受けており、在庫解消への効果は大きい」と期待を寄せる。 同事業で牛肉のまとまった販路を確保したのは石川県だ。同県では7月から、県のブランド和牛「能登牛」の提供を開始。約30トンが消費される見通しで、「能登牛」の年間生産量の1割に上る規模となる。県は「新型コロナ禍で和牛消費が落ち込む中、新たに需要を創出する同事業は有意義だ」と強調する。 他にも、「鳥取和牛」を提供する鳥取県は「訪日外国人の需要が見込めない中、(同事業で)大きな効果が出ている」と説明。「米沢牛」などを提供する山形県は「(給食で使う牛肉の)取引額は1億円を超え、地域への経済効果は大きい」と指摘する。 同省は、同事業の対象人数を約1000万人と想定。上限の1人300グラムを単純に掛け合わせると、同事業で最大3000トンの需要が生まれる計算となる。 新型コロナの影響で和牛の在庫は積み上がっている。国産牛肉の冷凍在庫量は、前年同月を4割(3000トン)上回った5月から減少傾向にあるが、依然として2割上回る水準にある。 同省は「(同事業で)在庫解消に一定の効果が期待できる。子どもへの食育にもなり、将来的な和牛の需要開拓にもつながってほしい」(食肉鶏卵課)と、期待を寄せる。
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