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“先が読める”面白さ 「半沢直樹」は令和の時代劇か 仕事も妻も 男の理想体現


7年ぶりに帰ってきた倍返しの男、半沢直樹(堺雅人)

 日曜劇場「半沢直樹」(TBS系、日曜日午後9時)の勢いが止まらない。視聴率は初回22%を記録し、その後も回を重ねるごとに上昇中。絶対に「倍返し」をしてくれるという“先が読める面白さ”は、勧善懲悪の時代劇が令和を舞台に換骨奪胎された感覚だ。「仕事ができて家に帰れば物の分かった美しい妻。半沢は昭和の男の理想を体現」と話す専門家も。鬱屈を抱える中堅層のサラリーマンを中心に、日曜の夜が熱くわいている。

  ■王道の展開  「詫(わ)びろ詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ」-。

 ドラマは、大手銀行を舞台に、激しい出世競争や渦巻く陰謀、壮大な復讐劇が描かれる。7年前の前作最終回では、上層部に歯向かった堺雅人さん(46)演じる主人公、半沢直樹が銀行本流を外され、子会社の証券会社へ出向を命じられた。「誇張は激しいが、業界のネガティブな一面を映し出しており、妙なリアリティーを感じた」と話すのは、元メガバンク勤務の50代の男性。

「サラリーマンが組織で生きていくことの生々しさ」が反映された骨太の物語構成と、登場人物たちのオーバーアクションが巻き起こす笑いによる緩急が半沢直樹の魅力だ。シリアスで重厚な物語だからこそ、敵味方がはっきりして個性が単純明快なキャラクターの生きざまが際立つ。

今作では半沢が、出向先の証券会社で、古巣の銀行が絡んだ大型買収案件の陰謀に巻き込まれていく。

第2話では、歌舞伎俳優の市川猿之助さん(44)が演じる敵役・伊佐山部長が、銀行本社に呼び出した半沢に対し、憎々しげな“顔芸”とともに浴びせる「詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ」コールが登場。前作同様にこんな劇画調のアクションが大きく注目を集める。そこはコミカルだが真剣、真剣だがコミカルという絶妙のさじ加減だ。男性は「エンターテインメントに徹しているからこそ、虚構や誇張もすんなり楽しめてしまう」と満足げだ。

ただ一方で、「正直に言って、ストーリーに7年前ほどのドキドキ感はない」とも話す。確かに、毎話のように飛び出す“名言”に盛り上がる一方で、前作以降の「下町ロケット」や「陸王」「ノーサイドゲーム」といった池井戸潤原作の日曜劇場に慣れ親しんだ視聴者からすれば、なんとなく先の展開が読めるのだ。

しかし、「今作は前作と違い、先が読めるからこそ“お約束”的な面白さが生まれてきている」と話すのは同志社女子大の影山貴彦教授(メディアエンターテインメント論)。最後に印籠が出てきて全てを解決する「水戸黄門」や、必ず手術が成功する「ドクターX」のように、半沢直樹の倍返しも“お約束”や“様式美”として、視聴者に好ましく受け止められている。

「いわば日曜劇場は『鬱屈したサラリーマンすっきり枠』。この王道の展開から大きく外れないことが、かえってファンを喜ばせている」

 ■視聴率、今年のドラマトップ

この人気は、抜群の視聴率が何よりの証拠だ。

「倍返しだ!」

7月19日の初回終盤、もはやおなじみとなった決めセリフを半沢が言い放つと、ネット上では視聴者が「待ってました!」と色めき立った。ツイッターでは放送中、「半沢直樹」が世界トレンド1位になり、Yahoo!リアルタイム検索ランキングでは「半沢」が1位になったほど。

リアルタイム視聴率は前作初回19・4%を上回る22・0%、録画視聴率とも言われるタイムシフト視聴率は13・9%。重複を差し引いた合計の総合視聴率は33・0%(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。その後もぐんぐん上り調子で、「最終回40%超も夢ではない」(業界関係者)。民放キー局が共同で設けた無料配信サービス「TVer」(ティーバー)などでの配信を行っていないことも、視聴率上昇に拍車を掛ける。

一般的に不況や暗い世相の時こそ、復讐(ふくしゅう)や下克上といった物語は好まれる。今年1月に顕在化したコロナウイルス禍で、在宅・自粛生活も長く続いている。企業の経営状態も、先行きの不透明感がまったく拭えない。こうした状況の中、撮影の都合で当初4月予定だった放送開始が3カ月も遅れたことが、視聴率にはかえって追い風になった可能性もある。

◇令和に輝く昭和の男  世代別視聴率を見ると、半沢直樹はどの世代でもまんべんなく人気が高い。影山教授は特に男性の35~49歳(M2層)、50歳以上(M3層)の視聴率の高さに注目する。「通常はそこまでドラマに熱心ではない現役サラリーマン層の支持が、全体の視聴率を底支えしている」。初回はM2層が13・6%、M3層が16・2%と、2位以下の番組から突出していた。

仕事ができて、物分かりの良い妻がいる主人公が、艶めいた雰囲気の女性の助けを得て、部下を率いて大きな仕事をやり遂げる。影山教授はこの流れに、「昭和の男の理想と世界観が詰まっている」と指摘。「そこを押さえて骨太の物語を描き切り、さらにSNS映えするエンターテインメントを好む若年層を取り込められるなら、令和でもヒットを記録し、長く愛される作品になるだろう」と話した。

産経新聞

 

 

一言コメント
今回も倍返しは健在だ!!


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