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W王手藤井棋聖「寄せで誤算」大逆転負け危機を反省


第61期王位戦7番勝負第3局を制し、タイトル獲得まであと1勝とした藤井聡太棋聖

将棋の最年少タイトルホルダー、藤井聡太棋聖(18)が最年長タイトルホルダー、木村一基王位(47)に挑む第61期王位戦7番勝負の第3局が4、5の両日、有馬温泉(神戸市北区)の老舗旅館「中の坊瑞苑(ずいえん)」で行われ、先手の藤井が木村を破り、3連勝で史上最年少2冠にあと1勝とした。王位を獲得すると、史上最年少での八段昇段の記録を同時に達成する。第4局は19、20の両日、福岡市の「大濠公園能楽堂」で行われる。

  ◇   ◇   ◇

神戸・六甲山の山峡にある有馬温泉。老舗旅館街にある「中の坊瑞苑(ずいえん)」の貴賓室。遠くにセミの鳴き声が聞こえる対局室で、2日間にわたり、「史上最年長VS史上最年少」の激闘が繰り広げられた。

ほぼ互角で迎えた2日目、仕掛けたのは藤井だった。正午前、57手目で先手4五歩と指し、本格的な戦いに突入した。中盤、藤井が鋭い踏み込みから、巧妙な手順で攻めをつなぐ。粘り強い強靱(きょうじん)な受けから「千駄ケ谷の受け師」の異名をもつ木村は、徹底的に受けた。終盤戦、切れ味鋭い攻めを連発した藤井が、木村の受けを振り切った。

開幕3連勝にも笑顔はない。「寄せにいったところで誤算があり、その後、負けにしてしまったかもしれない。厳しかった」。最終盤の攻防戦、あわや大逆転負けの局面を振り返った。

藤井にとっては7月16日に最年少の17歳11カ月で初タイトルを獲得してから初めての番勝負だった。大舞台で約80年前の昭和初期に指された「土居矢倉」を採用した。昭和のレトロな戦法に現代風のアレンジを加え、令和の時代によみがえらせた。

師匠の杉本昌隆八段(51)は言う。「まさにコロンブスの卵です」。だれでも思いつきそうなことでも、最初に行うことは難しい。将棋界の未来を背負う18歳は、研究した手を果敢に実戦でぶつけた。

初タイトルからわずか3週間で2冠に王手をかけた。数々の最年少記録をつくってきた高校プロは「羽生超え」も視野に入れた。史上最年少2冠は羽生善治九段(49)が持つ21歳11カ月。今シリーズを制すれば、この記録を大幅に更新する。

2冠を獲得すれば日本将棋連盟の八段昇段規定「タイトル獲得2期」を満たし、八段に昇段する。最年少八段は「ひふみん」こと、加藤一二三・九段(80)が持つ18歳3カ月。第4局に勝てば、18歳1カ月での記録更新となる。

第4局は2週間後、舞台は福岡だ。「ここまでの将棋の内容を反省し、いい将棋を指したい」。天下人・豊臣秀吉がこよなく愛した有馬の名湯で疲れを癒やし、2つ目のタイトルを目指す。【松浦隆司】

◆王位戦 将棋の8大タイトル戦(ほか名人・竜王・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)の1つ。1960年(昭35)創設、初代王位は故大山康晴十五世名人。予選を経て、紅白各6人1組の挑戦者決定リーグを開催。トップがリーグ同星で並んだ場合は、挑決進出者を決めるプレーオフとなる。紅白各組のトップ同士が挑戦者決定戦を行い、勝者が挑戦者。タイトル戦は7番勝負の2日制で全国を転戦し、先に4勝した方が獲得する。

【対局VTR】

◇第1局 7月1~2日(愛知県豊橋市「ホテルアークリッシュ豊橋」) エース戦法の角換わり腰掛け銀で挑んだ先手の藤井が積極的に踏み込んで攻めまくり、地元で快勝した。初日の封じ手の場面では、封筒を脇息(きょうそく)に置いて署名する「新手」も披露。初めて体験する2日制7番勝負を白星で飾った。

◇第2局 7月13~14日(札幌市「ホテルエミシア札幌」) 先手の木村が相掛かりに誘導。お互いに時間を使う展開で、藤井は初めて「封じ手」を体験。2日目の夕方、木村がようやくペースをつかんで攻勢に出たが、寄せ損ねる。劣勢から反撃に転じた藤井が、大逆転で2連勝。

日刊スポーツ

 

 

一言コメント
ピンチも跳ね返すところがまたすごい。


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