仕切り板が飛沫防止に効果 「一蘭方式」コロナで脚光
- 企業・経済
- 2020年7月24日
エアシャワーも導入
両側に仕切り板があり、前にすだれがかかった一蘭のカウンター=福岡県新宮町
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、ラーメンチェーン「一蘭」(福岡市)が独自の衛生対策を打ち出している。名物として知られるカウンターの「仕切り板」が感染抑止策として脚光を浴び、同様の仕切りを設ける飲食店が相次ぐ。さらに、入店時に体に付いたほこりなどを吹き飛ばすエアシャワーなどの新しい対策を「一蘭衛生システム」と名付け、今後3年で国内店の3割程度に導入する方針だ。飲食店の新常識として定着するか注目される。
「まねされるということは本物。会社としてはプラスになった」。中村和也専務は、コロナ禍で仕切り板が注目されたことを肯定的に受け止める。
カウンターを1席ずつ仕切り、前方にすだれを掛ける客席設計は、吉冨学社長が考案し、1997年に初めて導入された。「味集中カウンター」として、他の客や店員の視線を遮ることで、リラックスした状態で味わってほしいとの狙いだった。
当初は賛否が分かれた。「なぜこんな狭いところで食べないといけないのか」「隣の人と話せない」といった声が聞かれた一方、女性客や著名人からは「人目を気にせずに食べられる」と好反応。実際、女性客の割合が増えるという予定外の効果があった。それが、新型コロナの感染拡大後は「隣席との隔離」が飛沫(ひまつ)防止策として注目された。さまざまなメディアが取り上げ、採用する飲食店や飲食スペースが増えた。福岡県篠栗町の篠栗中でも導入された。
一時撤去も、衛生対策への関心高まり再設置
一蘭新宮店入り口に設置されたエアシャワー=福岡県新宮町
一蘭は6月1日、福岡県新宮町の新宮店に、エアシャワーを設置した。来店客は入り口で靴底を消毒し、入ってすぐの個室でエアシャワーを浴びてから、殺菌用の光源などが設置された個室を通る。続いて検温用カメラで体温を測り、食券を購入する。一連の仕組み「一蘭衛生システム」は、「密」が生じやすい飲食店でも安心して入店してもらう狙いがある。
実は、新宮店にエアシャワーが設置されるのは2度目だ。1度目は09年だったが、当時は客から「そんなに汚いと思われているのか」といった反応が相次ぎ、間もなく撤去した。今回はコロナ禍で、来店客の衛生対策への関心が高まっているとみて再設置を決めたという。
反響は大きいといい、新宮店ではエアシャワーなどの動画を撮ってSNSにアップする人の姿も目立つ。中村専務は「今は物珍しさもあると思う」として上で「今後も一般生活者の衛生対策への目線はシビアになっていく」と、新システムの定着へ手応えを語る。
一蘭は、15年にはラーメン店では他社に先駆けて食品の安全性を証明する国際規格「ISO22000」を取得するなど、衛生対策を重視してきた。コロナ禍を機に新たな仕組みを打ち出し「安全安心」を訴えることで、外食業界のピンチを乗り越える方針だ。
一言コメント
今後は一蘭方式が増えるかも…
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