リニア、27年開業困難に 静岡知事、準備工事認めず
- 政治・経済
- 2020年6月27日
静岡県の川勝平太知事=2019年12月、県庁
リニア中央新幹線の品川(東京)―名古屋間の2027年の開業が遅れる公算が大きくなった。JR東海が6月中の着手が必要としていた静岡県内の工事の準備について、川勝平太知事は26日、「認められない」と明言。環境問題をめぐって溝が埋まっていない。
川勝知事とJR東海の金子慎社長は同日、県庁で同問題をめぐって初めて会談した。JR東海は準備工事に6月中に着手できなければ「27年開業が困難」と言及しており、トップ会談で打開を図ろうとしたが、平行線に終わった。
金子社長は会談で、トンネル工事に先立つ作業場整備などの準備工事に理解を求めた。トンネル掘削とその後の試験などを合わせ7年半ほどかかるため、「作業はぎりぎりのタイミングだ」と述べた。
南アルプスを貫くトンネルの静岡工区(8・9キロ)で、飲料水や工業用水に使う大井川水系の流量が減ることを県側が懸念し、着工に同意していない。工事には河川法にもとづき知事の同意が必要となる。同工区は屈指の難工事だが、計画より3年近く遅れている。
JR東海の求めに対し、川勝知事は、準備工事は県の条例に基づく環境保全のための協定を結ぶことが前提と表明。工事を認めるかどうかは条例に沿って判断するとして明確な回答を避けた。ただ、県によると、県の専門部会での議論などを経る必要があり、協定の月内の締結は不可能とした。
川勝知事は会談後の報道陣の取材にも、JR東海が求める工事の大部分は「本体工事と一体。認められない」と断言。この発言を受け、JR東海幹部は同日夜、開業が遅れる公算が大きいとの認識を示した。
双方の隔たりを埋めようと、国土交通省は4月、工事が大井川の水に与える影響などを検証する有識者会議を立ち上げ議論が続いている。トンネル本体の着工も先が見通せていない。
開業が遅れれば、総事業費9兆円の巨大インフラ事業は軌道修正を余儀なくされそうだ。最速で37年の大阪延伸開業の計画にも影響がでる可能性がある。
リニアは開業から半世紀余が経過した東海道新幹線を補完し、東京、名古屋、大阪の三大都市をつなぐ大動脈を二重にすることを掲げ、JR東海が14年に着工。最高時速約500キロで品川―名古屋間を最速40分で結ぶ。9兆円全額をJR東海が負担し、国も財政投融資から約3兆円を貸し付けた。
一言コメント
なぜ直前でこんなことになったのか?
コメントする